Original Story

□素直になれない
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「もう少し頑張れ。」

助けだした男はそう言いながら神流の手首を掴んだまま走る。

やがて2人は非常階段にたどり着き、そこから外へと飛び出した。だが、外に出ても足は止めず、校外へと走り続けた。

「ここまで来れば大丈夫だろ。」

ふぅ、とため息をついた男は額に浮かんだ汗を拭っている。走りっぱなしだった神流は地面に座り込み、息を整えるのに必死だ。

「…大丈夫か?」

あまりの息の乱れように心配になったのか、男は神流の顔を覗きこんできた。息を整えていた神流はキッと相手を睨みつける。

「…だ、大丈夫…なわけないでしょ!!…大体ッ…なんで幸田が…あそこにいたのよ!?それ以前に!…今日、なんで帰ったのよ!!」

切れ切れになりながらも言葉を紡ぐと男―幸田智樹―はけろりとした顔で「あ、忘れてた」と神流の神経を逆撫でするようなことを言った。

「あんたねぇ!!」

「オレがあそこにいたのは、なんかヤバイ気がしたから。」

「……ヤバイって何よ?」

「神流のピンチっぽい気がした。」

「勝手に呼び捨てにしないでよ!!……ていうか、幸田って霊感あるの?」

「いや、勘。」

「………。」

淡々と語られる話に思わずガクッとうなだれる。そうだ、幸田はこういう奴だった。どっかズレてて勘で生きててとんちんかんなことを言う奴。でも、顔と性格がいいから人に好かれているムカつく奴。

「神流?」

「だから呼び捨てにしないで。」

「帰んないの?」

「……幸田が帰ってから帰る。」

「なんで?」
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