Original Story

□素直になれない
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「うーわー。先生も電気くらいつけておいてくれればいいのに…。」

明かりのない廊下を玄関目指して歩いていく。教室から玄関まではそれ程遠くない。だから大丈夫だろう。そう考えていた矢先に、背後から笑い声が聞こえ、次いでパタパタと無数の足音が暗い校舎に木魂する。

「………ヤバいかも。」

呟きながらも玄関を目指して走る。笑い声や足音が徐々に近寄ってくるが、振り向かない。

息が切れる前に玄関にたどり着いたが、またもや問題が発生した。

玄関が、開かないのだ。

「ッ!!」

開かない玄関に苛立ちながらも、今度は職員玄関を目指して走る。生徒玄関が閉まっていたのは下校時刻が過ぎたから。職員玄関ならまだ空いているはず。

一縷の望みを託し、生徒玄関よりも遠い職員玄関へ走る。後ろからは依然として笑い声、足音が聞こえてくる。心なしか笑い声が大きくなった気がする。

「大丈夫…大丈夫っ!!」

自分に言い聞かせるように呟きながら走る。ようやく見えた職員玄関に安堵した瞬間、背筋が凍る。

「……っ、……。」

職員玄関の前に立つ女生徒。誰から見ても異様な女生徒に神流は立ち尽くす。聞いたことのある話、現代の学校に出る幽霊―ヒキコさん―。

彼女に引きずられてはいけないと友達から聞いたことがある。

立ち尽くしている間にも少しずつ近寄ってくるヒキコさん。もう少しで手が届く、と言うくらいの距離でようやく正気に戻り、冷や汗をかきながらも逃げる。

頭にあるのはヤバイ、まずい。そればかり。どこに向かうでもなくただ闇雲に走っても状況が改善されないのはわかっている。だが、この状況で何をすればいいのかなんて思いつかない。
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