ちなみ君と女子高生

□電車の中の女子高生
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「余地夢ぅ?」
「うん、余地夢」
女子高生の放課後といったらやっぱりおしゃべり。それは今も昔も変わらないと思う。登校中の電車の中でしゃべり授業中にしゃべり昼休みにしゃべり、そして放課後のおしゃべりタイム。
つまり彼女達の生活はほとんどおしゃべりで成立していると言っても良い。
その内容は、恋の悩み、友達との共通の趣味、それからアイドルの話に教師の愚痴。
多分、これがおしゃべりのベターな内容。
第三者が聞いていて楽しくないものや全く意味の分からないものがほとんど。
教師の愚痴となると話は別だが、行き過ぎると不愉快だ。
けれどまれに…どれにもあてはまらない興味を引かれる事を話している事がある。
今の彼女達がそうだった。
「最近ね、よく予知夢を見るのよ」
「へぇー。どんなっ?」
茶髪のくるくるロングの女子高生が瞳をきらきらさせて、隣にいるショートカットの女子高生の顔を覗き込んだ。なるほどメルヘンチックな事が好きらしい。
「例えばありの巣にアンモニア流し込んで腐臭を漂わせて死にそうになって這って出てきたありんこを一匹ずつ釘で殺すというちょーぷりてぃないたずらをする少女が夢に出てきて。実際今日の朝、そんな少女を見たわ。と、まぁ規模の小さなものから」
いや、それどこの悪ガキだよ。
てかグロいよぷりてぃじゃ無いよ規模とか言ってる問題じゃ無いよその性格強制してよ。
「旧友をおとしめて不登校にさせる作戦を考える、見た目ほほえましい中身グロテスクな女子高生なんて中位のもの。これは今日の下校中、つまりさっき話しているのを見たわ」
中位じゃないって。でけえよ十分。
やばい、天使の様に見えていた女子高生、もとい女性が悪魔に見えてきた。
「そして夫に出て行かれてしまったあわれな女性…しかも通帳まで持って行かれて…」
「えぇ?!お金目当てだったの?ひっどーい!!」
あ…もしかしたら女性がこんな風に病んでしまうのは、男のせいかもしれない…。
少し考えを改める必要あるかも、俺。
「えぇ。そして女性はぶち切れたわ。男と通帳を持ち帰り、男をぶん殴り、男の通帳を奪い取り、男の性別を奪い取り、オナベを追い出し、沼に沈めたわ。という規模の大きなものまで。これは先週の土曜日見たの」
おいおい、一気にスケールでかくなったぞ。通帳ともかく、性別奪うなよ!犯罪だよそれ。メルヘンチックどこ?
あ……もしかして、これ嘘?
だよなぁ。年頃の女の子がちょっとした嘘をついた程度。うん、きっとそうだ。
「ちなみに嘘じゃないわ」
……え?心読んだ?
うふふ、と楽しそうに笑うその女子高生Aの隣で女子高生Bが誰も嘘なんて思ってないよ、とこれまた楽しそうに言う。
いや、思えよ俺気になるよ。
内心女子高生てこんな?と自問自答を繰り返す男子高生致並。と、その瞬間致並の降りる某駅の名前が告げられた。
グットタイミング!
もうこんな子達とは居たくない。
ぷしゅーとドアが開くと、カバンを持って一目散に逃げる。
逃げる逃げる。
女子高生A、結構可愛かったなとか思ってないから。全然思ってないから!
そしてしばらく走って、一つの疑問にたどり着いた。
何であの子、夢が現実になったって、知ってるんだろう。
最後のなんて、結構複雑な家庭の事なのに、何で?
そこまで考えたけれど答えは全く分からず。

まぁ……いいや。どうせもう会う事滅多に無いだろうし。
致並はそう決め付ける事にした。
致並の通う共学の制服だと、今も気付かずに。

これが、病み気味女子高生との出会い。

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