その他小説

□優しいその腕で望む
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「僕はもうすぐ消えます。」
そんな俺の思考は、骸の声によって妨げられた
「あっそう」
「二度と会う事は無いでしょう」
「……はあ?何それ。どういう事?」
「ちょっと最後にお願いがあるんです。」
俺の質問は無視か。
それでも返事をした手前、無視する事は出来ないし、したくない。
「……何?」
「殺して下さい。」

まるで日常会話をしている様な何でもない口振りで放たれた言葉は、俺の常識のはるか斜め上をいくような言葉だった。
「嫌だよ」
反射的に返す。
最後のお願いだと言うから、お金が沢山必要になっても叶えてやろう。という俺の男らしい決意は一瞬のうちに無くなった。
「経済的負担ゼロで細やかな願い事を断るのは何故ですか?」
不満げに眉を寄せる姿に、俺は声を荒げて言った。
「当たり前だ!お金がかからないのは個人的に嬉しいけど、人殺しなんかお断りだ!大体……」
「大体?」
「お前死んじゃったら、髑髏どうなるんだよ?」
「死ぬでしょうね。僕らは二人で一人です。運命共同体ですよ」
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