その他小説
□ただいま
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キッドは一人溜め息を吐いた。
そんなキッドの視線の先には相棒の一人であるリズが、落ち着きなくそわそわとして辺りを見回している。
「そろそろ落ち着け、リズ」
堪りかねたキッドがそう声をかけると、だってよぉと気の弱い返事が返ってくる。
「こんな雨なんだぜ?パティは傘も持たずに出かけたし……」
見れば確かに黒い雨雲が立ち込めて、ざあざあと大雨が降っている。
夕立から変化したのだろう。一切やむ様子を見せない雨に、挙動不審のリズ。
「心配するな。あいつはもうすぐ帰ってくるよ」
そう言ってから読みかけの本に目を通した。
ぱたん、と扉が開く音がした。
それにリズがはっと顔を上げ、キッドもつられてその方向を見ると。
「にひひ、濡れちゃったー」
にかっと楽しそうに笑うパティにリズは安堵の溜め息を吐いたが、対照的にキッドは眉を寄せた。
「パティ、ずぶぬれだぞ」
「ごみんにー」
パティ独特の謝罪を入れて笑うのを見てから、キッドはバスタオルを取ってこようと移動した。