長編

□選ぶものは
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予定の時間からいくら過ぎたのだろう。
相変わらず携帯に連絡は無かった。
もう止めちゃえば?
でも、もしかしたら来てくれるかもしれない。
そんな気分がランカの中でせめぎ合い、どうにもこうにも動けなかったのだ。
最初はきょろきょろと頻繁に辺りを見回していたのだが、なんだか悲しくなってきた。
今は時折顔を上げて見回す程である。
アルトに電話をかける気分にはなれなかった。

それじゃあ、このまま待ち続けるの?
頭の中で、もう一人のランカが囁いた。
それで会えるのならば、待ち続けても良い。

それって、重くない?
頭の中の問いかけに返す言葉も無い。

だめだ、泣きそう。
そんな思いを抱えながら、それでも泣く事を許さなかったランカの視線が、徐々に俯いていく。
だが、泣くのだけは必死で堪える。そんな時だった。


「ランカちゃん!」
声と共に肩を掴まれ、振り向かされる。
そこには酷く真剣な表情をしたミシェルの姿があった。
「ミシェルくん?」
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