稲妻小説

□季節は巡って桜咲く
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※高校生設定




また今年も
お前と一緒に

この桜並木を
見る事が出来て…

本当に幸せだなって、
心底俺は思うんだ。



季節は巡って桜咲く



今日からまた、俺にとって
新しい生活が始まる。

見慣れた桜並木を見渡せば、
一年ぶりに顔を見せた桜の花々が俺を祝福するかのように咲き乱れていた。

そう、俺は今日から新たに
中学生から高校生への門出に歩みを進める。


思えば、本当に数え切れない程
沢山の事がありすぎた中学校生活だったけれど

今この咲き乱れた桜と
自分が身につけている新しい高校の制服を見てみれば、

あぁ案外
短かったんだな…

と少し悲しげな心情に
心を痛ませている自分も居る。

中学で自分と共に戦ったチームメイトは、みんなバラバラに違う道へと進んだ。


率直に言うと、寂しい。

ずっと自分の側に居た
大切な存在達なのだから。


俺はふと、歩いている通学路の途中で、引き止められたかのようにピタリと足を止めた。

そしてそのまま一際輝いている
頭上の大きな一本の桜の木を見上げる。


そういえば、毎年毎年
円堂と一緒に桜を見る事が一年の楽しみになっていたな…

ふとそんな事を思い出して、
可愛い幼なじみ兼恋人の事を桜の木と重ねて思い浮かべる。

するとその時、ドスッと
自分の背後を勢いよく誰かに飛びつかれた。


…こんな事をするのは
大体一人しか居ない。


この腕の感触や、抱きつかれた時の力強さ、タイミング、風に乗って自分の鼻をふわりと掠めるお日様のような温かい香り。

全てが俺の中で一つ一つ
繊細に記憶されている。

きっと後ろの本人は、俺がまだ自分の正体に気が付いてないだろうとワクワクしているに違いない。


でも実際はその真逆。
一瞬で気付くだろ普通。

それでも俺は昔から
何一つ変わらない相手の行動に少し嬉しくなる。

そして俺は小さくため息を吐きながら、抱き付いてきた張本人の腕をゆっくりと自分から離した。


『まったく…、お前は本当に変わらないな円堂』

「あれ?やっぱバレてた?バレないと思ったんだけどなー。まぁ風丸は鋭いからわかるか!!」

『俺が鋭くなくてもバレバレ、こんなの誰でも分かるさ。毎年毎年同じ事されてちゃな』


そう言って俺は、
苦笑いを浮かべる円堂の額に容赦なくデコピンをくらわした。

高校生になったからか、
ずっと円堂の額についていたオレンジのバンダナはもう無くて

逆に大きく垂れた前髪が、
円堂の可愛さをさらに引き立てているように感じられた。

加えて俺も、ずっと伸ばしていた
長い長い髪を肩の少し上までの位置まで切った。

だから円堂に抱きつかれた時
いつも揺れていた髪の感触が無いため、少しだけ変な感覚に陥る。


デコピンを額にくらった円堂は、
大袈裟に「痛ってぇ〜」と額を押さえて叫んでいたが、

またすぐにいつもの
照れ笑いを浮かべたような笑顔に戻った。


「次は絶対にバレないように頑張るからな!!」

『無理だって、俺にはお前の事なんてすぐに分かるんだからな』

「むー…じゃあなんで風丸は、すぐに俺だってわかるんだよ?」

『ハハ、さぁな?』


曖昧に答えると、円堂は
まるで風船のようにぷぅっと頬を膨らませる。

俺はそんな円堂にクスクス笑いかけながら、また円堂と並んで桜並木を歩き始めた。


それからはずっと二人で
歩きなれた桜並木を無言でゆっくり歩く。

自分と比べるとまだ小さいが、
中学校の頃に比べて少し身長が伸びた円堂を横目でチラリと見てみれば

自分が通う同じ高校のブレザーを着て、中学校の頃からトレンドマークだったバンダナを外して…

少しだけ大人になった
愛する恋人の姿。

幾度の季節が変わる度に一番近くで、円堂の姿を見てきた自分。

でも俺はやっぱり、
この季節の円堂が一番好きだ。

新しい学年に上がる毎に、
ワクワクした気持ちが満面の笑顔となって円堂の表情に現れる。

そして俺の大好きな
その笑顔は、この美しい桜の花々と共に咲いていくんだ。


変わらない、その笑顔。
あどけなさが残るその表情。

全てが円堂の最大の魅力であり、
狂おしい程に愛おしい。


「でも、あれだよな!!やっぱちょっとブレザーって照れちゃう…よな//着慣れてないしさっ!!」

『そうか?よく似合ってるぞ』

「…あ、ありがと。でも俺より、その、い…一朗太の方が全然似合ってる、ぞ///」


真っ赤な顔をして、
精一杯話す円堂は本当に可愛くて

俺はまた今年も円堂の隣に
居られるのだなと思えば、自分自身が本当に幸せだと感じる。

いくら年を重ねても
どんなに姿が変わっても

やっぱり俺の好きな円堂守は、
そのままの円堂守な訳で

この桜並木のように、
いつまでも俺の隣に居てくれる。


『なぁ守…』

「な、なんだっ?//」

『お前はさ、いつまでも変わらないままだよな』

「…どうしたんだ風丸?」

『…いや、気にするな。それよりも、』


“今年もずっとずっと、
一緒に居ような”

何年経とうが
どれだけ季節が巡ろうが。


桜の木に視線を向けながら、
そっと円堂の手を握る。

すると円堂は、握られた手に
少しだけ頬を赤く染めて俺に視線をむけた。

それから少しした後、
「…ん//」と聞こえるか聞こえないか程の小さい返事をして


俺の頬に
触れるだけのような

優しく啄むキスを
一つ、贈ってくれた…。



end.

(季節が巡れば)
(桜が咲いて春が来て)
(そして俺は誰よりも輝くお前と)
(新しい生活を迎える)


企画イナズマ高校生様に
提出させて頂きました!!


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