蒼海

□蒼い海の姫君
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蒼い、蒼い海の底、そこに広がるのは神秘なる深海。誰も到達したことのない幻想的な世界。地上の者が見たこともないような魚や海藻で溢れている。イルカやクジラも海水の中を舞い、太陽の光ではない様々な淡い色の光が漂っていた。そんな深海に不思議な光を放つ海の渓谷があった。そこにあるのは大きな人工的な建物。地上で言う城のような形だった。

そこにたくさんの何かが向っている。上半身が人間で下半身が魚の男女。赤や青、緑など様々な魚のしっぽをもった生き物。その尾ひれは光にあたると透けて見えて幻想的である。服と呼ばれる物は身に着けておらず、しいて言うならば女性は貝の胸当てをつけているくらいだ。人間と同じように痩せていたり、太っていたりと様々な体型がある。魚の尾ひれを除けば、見た目は人間と変わらない。

彼らはなにやら話しながら美しく威厳に満ちた城へと向かっている。海の中で生きていくことができ、海の中で苦しむことなく話していられる彼らはまさにクラウドが憧れた人魚たちだった。

「あら、御機嫌よう。今日は旦那さまも一緒なのね。」

2人の夫婦らしき人魚に一人の女性の人魚が声をかけた。

「ええ。だって今日は末の王女様のお誕生日ですもの。初めてお披露目されるのよ?せっかくだから無理に連れてきたの。」

隣で男の人魚が苛立っているのか顔を背けてしまった。それに構わず奥方は続ける。

「どこぞの虫がつかないようにって今までお披露目されなかった姫君ですもの。そりゃ気になるわ。あの綺麗な6人姉妹の中でも一番の美人だっ聞いてからお目にかかりたくてしかたなかったの!」

「そうよね〜、見なくちゃって思って私もこうやってきたのよ。そう言えばお婿探しのために今回お披露目するって話しよ?王様がお相手をお決めになるらしくて。」

「まあ、王様がお相手をお決めになるの?きっとすごく大事にお育てになられたのねえ!ちょっと気の毒な気もするけれど。その王女様が生まれてすぐにお妃さまはお亡くなりになったし…手がかかるほど可愛いってことかしら。」

「ほら、もう時間よ。急いでいかないと始まっちゃうわ。」

「あら本当。行かなくちゃ。行くわよ、あなた。」

「…はい、はい。」

そうして人魚の御婦人方とその主人は城へと向かっていった。
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