薄桜鬼book2

□そんな貴方が大好き
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『左之さんてさ、エロいよねー』

「……はぁ?」





 そんな貴方が大好き





二人でえびせんを食べていた時になんとなくフッと思い、口に出した。
口に出すつもりはなかったのよ、でも出てしまったんだよ。



『……だって突然抱きしめてきたり、酷いときはキスしてくるし。』



私みたいに彼女じゃなかったら完全にセクハラで訴えられるよ。
まぁ、もし私が彼女じゃないのにされても許すよ?

私は寛大だから!



「それは大方酔ってる時だろ」

『酔っててもしてくることに変わりないじゃん。それに、左之さんは声がエロい。っていうか全体的にエロい。女の扱いに慣れてそう』



っていうか、多分慣れてる。



「随分な言われようだな」



えびせんを食べながら言う私を苦笑まじりに見る。



『…左之さんって結構真顔で歯の浮くような台詞を言うけどさ、恥ずかしくないの?』



正直台詞聞いてるこっちが恥ずかしくなるよ。
私何度か赤面したよ?



「好きな女に愛囁いてなにが駄目なんだよ」

『……左之さんて馬鹿でしょ?』



じゃなかったら真顔で砂糖でも吐いてしまいそうな言葉を言えるわけない。



「……」



あれ、黙っちゃった?
ちょっと言いすぎたかな……



『…左之さ―――』



最後まで言えなかった。

視界が、回転した。

ついさっきまで私には外の景色が見えていたのに、
今は左之さんの顔が私の目を埋めている。
背中に床がついている……。数秒かかってやっと状況を把握出来た。

あぁ、私押し倒されている。

なにをどうしてこうなったかは分からない。
押し倒されている意味がわからない。



『あのー、左之さん? ちょっ』



突然顔が近づいてきて、額にキスをされる。
それから目、鼻、頬、に何回もキスしてくる。



『くすぐったいって、ちょっ、やめてよ!』



すっごく恥ずかしい。
これは普通にキスされるより恥ずかしい。



「………かだろ」

『…え、なんて?』

「そんな馬鹿に惚れたお前のほうが、馬鹿だろ?」

『………』



否定できない。



『……馬鹿で悪かったわね!』



そんな私にさっきの苦笑とは違い、微笑みを浮かべて私の前髪を横に払う。


これは、左之さんの癖。
キスする前に必ずする癖。合図。
私はゆっくり目を閉じる。


そして、唇になにか温かいものがあてがわれ、私と彼の距離はゼロになった。








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