その他

□名前に恥じない
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「お前ってさぁ。」

「はい?」

取り立てを少し休憩し、公園のベンチで並んで座り、休んでいるとトムが唐突に口を開いた。

「名前に全く恥じない奴だよな。」

「は?」

静雄は思わずすっとんきょうな声を出してしまった。当たり前の事だろう、池袋の喧嘩人形とまで呼ばれている人物が平和島静雄という名前なんて、合っていないにも程がある。自他共に広く認められている事だ。
訳が分からず、ポカンとした表情を浮かべている静雄を見たトムはニッと笑った。

「だってよ、静雄。お前が色々ぶっ壊すのは、怒ってる時だべ?怒ってる時は誰だって色々なもん壊すわ。俺だってそうだし。」

「…トムさんと俺じゃあ壊すスケールが違うじゃないスか。」

静雄がボソッと言うとトムは「あ、言いやがったな」と言って静雄の頭を軽く叩いた。何故かトムに対しては軽く叩かれてもイラッとする事はない。静雄は、まだその理由に気付けていない。

「分からねえぞ〜。俺だってマジギレしたら自販機くらい投げるかも知れないべ。」

「ぷっ…」

自販機を投げるトムを想像して、静雄は思わず笑った。

「あ、何笑ってんだ。静雄〜」

「すみません…っ、考えたら何か笑えて…っくく…!」

「失礼な奴だな、おい」と言ってトムは笑いをこらえる静雄の脇腹を小突いた。
確かにトムは、生徒へのセクハラをした某学園の教師の頭を踏みつけていた事はあるが、本気で相手に怒って殴ったりした所は一度も見たことがない。
静雄は、暴力でしか解決できない自分と違ってトムさんには説得で解決できる能力があるのだろうな…と思い、少し悲しくなった。

「だーかーらぁ!」

「うわっ!」

トムがわしゃわしゃと静雄の頭を撫でた。静雄が驚いて顔を上げると、トムは呆れたように静雄を見ていた。

「全く…この前に自分が名前負けで云々って言ってたから俺の思ってる事を伝えたのに何でまた悲しそうな顔すんだよ、トムさん悲しいー。」

最後の部分の棒読みに静雄はまたクスッと笑った。

「うん、静雄はそういう顔が一番似合うな。可愛い。」

「あ、どうも………は?可愛い?」

一瞬聞き流しそうになった言葉に気付き聞き返すとトムは「気付くの遅いべ」と言って、カラカラと笑った。

「だから、怒ってない時にそうやって静かに笑ってる顔が一番静雄らしくて似合ってるって言ったんだよ。」

静雄は顔を少し赤らめ、トムに見られないように慌てて顔を背けた。

「さぁて、可愛い静雄君が元気になった所で再開するか!どっこいしょー」

「ちょ…トムさん!その可愛いって何なんスか、さっきから!」

「何だろうなー?ま、行こうぜ。静雄。」

「…うす。」

優しく微笑んで頭を撫でるトムの手を頭に感じた静雄は肩から無駄な力が抜け、何時になく穏やかな気分になった。
今日の仕事が終わった後に、お礼にどっかに夕飯食べないか誘ってみようかと思いながら、トムのあとを静雄は急いで追いかけた。







[後書き]
静雄くん、それはね、恋だよ(キラキラ)

ふざけたような口調で静雄を励ますトムさんと照れちゃう純情な静雄が好きです!(笑)
いやー、トムさん男前←
取り立て組改め、イケメン組にすべきだよ!(笑)
 

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