捧げ物

□真逆の僕ら
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昼休み、臨也はキョロキョロと教室を見回した。目が合った女子がキャアキャア言いながら教室を出ていくのを目の端でとらえた。普通の男子生徒なら小躍りして喜ぶ事態だが、自他共に広く認められる眉目秀麗さをもつ臨也にとっては虫が飛んでる程にしか感じられない。

「新羅。シズちゃんは?」

「え?あぁ…そういえばいないね。屋上かな?…それはそうと、またからかいに行く気かい?よく飽きないね。」

新羅はため息まじりに臨也を見て言った。

「まぁね。あ、次の授業はサボるねー。」

「だろうね。いってらっしゃい。」

悪びれる様子など見せる気すらなく手を振る臨也に、新羅はのんびりとその背中を見送った。



屋上の扉を開くと、少し冷たい風が入ってきて、臨也は思わず「寒…っ」と呟いた。しかしそんな風の中、堂々と眠る金髪長身の姿を見つけて、ニヤリと口角を上げた。

「シーズちゃん、」

名前を読んでみる。が、金髪の下の目は閉じられたままで。五ミリしかナイフの刺さらない腹筋が上下してるから…生きているのだろう。

「いいなぁ、馬鹿は風邪引かないから、こんな所で寝てても風邪引かないのか。…あぁ、人じゃないから風邪引けないのかな?」

起きている時にこんな事を言えば、絶対に手すりか扉か…静雄本体が飛んでくるだろう。…姿を見せた時点で飛んでくるには違いないが。
だが、静雄は起きる気配を全く見せない。
臨也はつまらなそうにため息をついて、静雄の顔をのぞきこんだ。くかー…という寝息を立てて眠っている顔はすごく穏やかで、あんな馬鹿力を持っている怪物には見えない。

「シズちゃん。」

寝ている事をもう一度確認すると、臨也は静雄の髪を少しつまんでみた。
臨也のもつ、夜の闇のような髪とは違い、少し傷んだ太陽の色。

「真逆だね。」

「…何がだ?」
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