捧げ物
□甘え下手な
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「ふぅー。平和ですネェ。」
午後のティータイムの片付けをし終えたブレイクは大きく伸びをした。
近くにある暖炉にかじかんだ両手を向け、温もりがじんわりと広がっていく心地よさに瞼が重くなる。
「あ〜。癒される〜。」
そのまま暖炉の前にボーッとしゃがみこんでいると、躊躇うような控えめなノックが響いた。
「はーい。入っていいですヨ。」
「…失礼する。………い、今、暇か?ザクス。」
「あれ!レイムさんじゃないですカァ〜。レイムさんから来てくれるなんて珍しいこともあるんですネェ。明日はブリザードか、飴でも降りますかネ。」
「あ、飴が降るほど珍しくはないだろ!」
申し訳なさそうに入ってきたレイムはモゴモゴと反論すると、無言でブレイクと背中合わせに座った。
「…レイムさん?それならいっそ隣に座ったらどうですカ?」
「いや、いい。」
ぶっきらぼうな返事が返ってきて、ブレイクは「それならいいんですケド。」と言って前を向いた。
暖炉に手をかざしたブレイクの「あ〜。」と緊張感のない声だけが響く。
レイムはいつものように本題に入りもせず、無言で窓の外を見ている。
曇り空なんて見ても面白くないだろうに。
「で、レイムさんはどうしたんですカ?」
「は!?な、な、何がだ!?」
「いや、理由もなしに来るなんてレイムさんらしくないなぁー…って心配になりまして。恋人として。」
「こっ…!?ど、どうしてお前はそう…サラリと…!」
後ろ向きのブレイクには見えないが、レイムが頭を抱えたのが分かった。
「どうしました〜?」
「………」
無言のままの恋人に苦笑しながらも手を後ろに伸ばし、短めの柔らかい髪の毛を撫でてやると、レイムの手がブレイクの空いている手に重なった。
「わ、笑うなよ?…な、何故だか…分からないが…ザクスに…あ、会いたくなった…。」
「…レイムさん………プッ!本っっ当に…ククッ…可愛いですネ…アッハッハッハ!!」
てっきり深刻な悩みでもあるのかと思って身構えてみれば、あまりに不器用な甘え方をする恋人に笑いが堪えきれず、レイムの念押しなどすっかり忘れ、涙が出るほどブレイクは笑った。そんなブレイクに、真っ赤になったレイムが勢いよく振り返った。
「な!何で笑うん…うわっ!」
怒鳴ろうと振り返った瞬間に腕を強く引かれたレイムはブレイクの腕の中に倒れ込み、柔らかく包みこまれた。
「どうせ甘えるんなら、抱きつくぐらいしてくれたって良かったじゃないですカ〜。」
ブーッと子供のように頬を膨らませながらブレイクは苦しいくらい強くレイムを抱き締めた。
「ぐぇ…ザクス…く、苦しい…し、死ぬ…!」
レイムが既にギブアップを訴えたが、離す気は全くない。
そういえば、一週間くらい話す機会がほとんど無かったなぁ…と思い、ブレイクはため息をついた。
「(私としたことが…さみしがらせてしまうなんて…恋人失格ですネ。)」
ブレイクの熱烈なハグが本当に苦しいらしく、レイムの手がブレイクの胸をバシバシと叩き出した頃、ブレイクはやっと力を緩めた。
「ねぇ、レイム。」
「な、なんだ?」
呼び捨てで呼ばれた事に驚き、文句を言うのも忘れてしまったらしいレイムの頬に優しくキスをした。
「今日くらいはずっと一緒にいようか。」
眼鏡の奥のハニーブラウンの瞳が一瞬嬉しそうに輝いた。
「…あぁ。…あれ?ザクス。お前、顔赤くないか?どうした?」
「暖炉のせいに決まってるでショウ。このヘタレ甘えん坊。」
「甘っ…!?」
聞き捨てならない!と喚きだした年下の恋人に見られないようにブレイクは顔を隠した。
甘え下手なのは自分も一緒らしい…というのは年上のプライドのために言わないでおこう…ブレイクは満たされた温かい気分の中、そう思った。
<後書き>
6800HITキリバン踏んで下さった方!ありがとうございます!!甘々というか…甘えん坊二名ですね!こいつら!畜生リア充め(笑)
遅くなってすみませんでしたああぁぁっ!書き直しはいつでも受け付けてますので!