パンドラハーツ
□将来の君
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「う…うわああああ…!!!すごい!すごいぞレイム!満開だ!早く!早く来い!みんなピンクだ!」
やや傾斜のある丘をレイムよりも先に登りきったリリィは興奮を抑えきれないようにピョンピョンと跳ねながら少し遅れて歩くレイムにブンブンとちぎれんばかりに両腕を大きく振った。
「レーイムっ!!!」
「リリィ!ちょっと…待ってくれ…非戦闘員は…そんなに体力…は、ない…んだから…」
レイムは息を切らせながら丘の上に上がり切ると、ドッとその場に座り込んだ。若い青年といえども、非戦闘員とバスカビルは体力が違いすぎる。ハァ…と息を整えて前を向くと、満開に咲き乱れる桜とその下で楽しそうに駆け回るリリィが目に入った。
「(やっぱり連れてきて良かったな…。)」
「レイム!レイム知ってるか!?」
「ん?何を?」
リリィは楽しそうに、桜から少し離れた所で座り込んでいるレイムの元に駆け寄って来るとレイムにスリスリと甘えるようにすり寄ってきた。
その様子に思わず微笑みながら頭を撫でてやると、リリィはニパッと満面の笑みをレイムに向けた。
「桜の花言葉だ!」
「花言葉?桜の?」
「そうだぞ!知りたいか、レイム!!」
自慢気にフンッと胸を張るリリィの隣で鼻に薄い桃色の桜の花びらを一枚くっつけたバンダースナッチもワン!と大きく鳴いた。
本当に息ピッタリというか、何というか……
「…クスッ…ああ、知りたいな。教えてくれるかい?リリィ?」
「よし!いいか、レイム!桜にはな、『ゆうびなじょせい』って意味があるんだぞ!」
『ゆうびなじょせい』…?リリィの言葉が理解できなかったレイムは一瞬フリーズしかかったが、動揺して眼鏡を磨く作業に入る前に漸く意味を理解した。
「………えーっと、優美な女性…か?」
「そうだ!ロッティが言ってたんだ!『すぐれたキレイな女の人』って意味なんだ!つまりはロッティみたいな女の人の事だって言ってたぞ!!ロッティが。」
「…その人は自分で言ったのか。…優美な女性…か。」
ロッティが自分で言った事に関しては軽くツッコミを入れたが、納得したように頷いているレイムを見てリリィは満足したようにバンダースナッチを撫でていたが、ふと何かを思いついたようにレイムをバシバシと叩いてきた。意外と痛い。
「レイム!レイム!」
「ちょ!痛っ!リリィ!痛い!な、何だ?」
「肩車してくれ!もっと近くで桜が見たいんだ!早く早く!」
子供っていうものは忙しい生き物だな…と心の片隅で思いつつも、元から子供好きなレイムはニッコリと笑ってリリィを肩車してやった。
「よ…っと……。」
「もうちょっと右!もうちょっと!……おおー!レイム!桜って近くで見たら、可愛いんだな!」
「ああ。そうだね。折らないように気をつけて…」
バキョッ!!!
「「あ゛……」」
頭上で聞こえた嫌な予感を感じざるを得ない音と、途端に美しく舞い散る桃色の花びらにギギギ…と音がしそうな程ゆっくりとレイムが上を見ると、リリィが真っ青な泣きそうな顔で桜の枝を握っていた。
「レイムぅ…折っちゃった…どうしよう…ロッティ折っちゃったぁぁ…!」
「いや、ロッティさんを折った訳じゃないから!!」
とりあえずリリィをゆっくりと地面に下ろすと、リリィはボロボロと涙を溢して桜の枝を握りしめた。
「だ、大丈夫!リリィ!ほら…貸してごらん?」
「ひっく…ひっく…うん。」
レイムはリリィから枝を受けとると、近くに花や木がない地面にそれを優しく刺した。
「何…っしてるんだ?」
「ほら!これでもう大丈夫だ、リリィ。また、この桜は大きくなれる。」
「ほ…本当か!?」
「ああ。もちろん。これからもっと綺麗な女の人になれるよ、この枝は。」
レイムがニッコリ笑ってみせると、安心したらしいリリィが再びニパッと笑った。
「よかった!なぁ、レイム!この桜、この中で一番綺麗になれるか?」
リリィは周りで咲き乱れる桃色の中心で地面に突き刺さっている桜を指差した。
「ああ。もちろん。」
「やったー!!また来年!また来年も見に来ような!レイム!」
「ああ。いいよ。」
「約束だからな!」
勢いよく抱きついてくるリリィを何とか受け止め、さっきから気になっていたバンダースナッチの鼻に乗っている桜の花びらを取ってやったレイムにワン!とバンダースナッチが大きく一言吠えた。
思わずビクッ!と飛び上がったレイムを笑うリリィの笑い声と必死に弁解をするレイムの慌てた声が舞い散る桜の花びらの中で響いていた。
[後書き]
弥生さん!リクエストありがとうございました!!
ほのぼの…?(笑)
リリィちゃんは表情がコロコロ変わりすぎて顔の筋肉が筋肉痛にならないか心配です←
レイムさんは本誌でもっとリリィと仲良くなって会話をしてくれないとリリィに対する口調が掴めなくて困る←おい
早く、ユラ、帰れ、国に!(笑)
弥生さん!こんなのでよろしければ受け取って下さい!