パンドラハーツ
□決まっている
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「自分が生きてきた年月の中で一番幸せだった時はいつか」と聞かれたら、私はどう答えればいいんでしょうネェ…。
レイムさんと初めてデートに行った日?誕生日に祝ってもらった日?恋人になれた日?…………ん?なんか全部レイムさん絡みですネ。…フフ、幸せ過ぎるのも考えものですネ。
私は一人微笑むと、口に放り込んでいた飴をバリバリと噛み砕いた。ハチミツレモンだったらしく、とろけるような甘い味が口の中で弾ける。
「…どうしたんだ、ザクス。珍しく静かだな。」
それまでずっと書類とにらめっこをしていた究極ワーカホリックな恋人が視線だけを私に向けて言った。皮肉めかして言ってますケド…もう何年君と一緒にいると思ってるんですカ。私は無駄に歳食ったつもりはありませんヨ。……つまり言いたい事は、心配ありがとうございますレイムさん。愛してマス。って事です。
あ。そういえば…なんですか、レイムさん。訪ねてきた恋人を放っといて仕事に夢中なのかと思えば…意外と意識してくれてたんですネ。
「フフ、何だかんだ言いながらも…私って愛されてますネ〜。」
「は?何の話だ?」
チュッとレイムさんに投げキッスを送ると、レイムさんはきょとんとした顔で首を傾げた。
…一体何者なんですカ、この可愛すぎる成人男子は。これが無自覚だというのだからタチが悪い。
気を取り直し、レイムさんのせいで危うく忘れそうになってしまった本題を頭の片隅から無理やり引き戻す。
「いや〜…レイムさんは、人生で一番幸せだった時っていつですカ?」
「は?私が?一番幸せだった時…?」
「そう。」
「うーん…ザクスはいつなんだ?」
「私は分からないんですよネ〜。」
そう言って飴玉をもう一粒ポケットから取りだして顔を上げると、レイムさんは眉根にシワを寄せて何やら難しい顔で私をジッと見ていた。
「…どうかしました?」
「…ザクスは…幸せじゃないのか?」
「え?」
レイムさんは「なんでもない」と言ってすぐに下を向いてしまったが、一瞬だけ見えた表情はどことなく寂しげで。
…ああ、なるほど。私の言い方が悪かったんですネ。
思わずクスッと笑い、足音をたてないようにそっと歩いてレイムさんの机の真ん前に立ち、優しく囁きかける。
「レーイムさん。」
「なん…っむぐ!?」
顔を上げたレイムさんの口の中に持っていた飴を放り込んだ。
今度のは真っ赤なイチゴ味のあめ玉ですヨ。
レイムさんは驚いたのか目をパチパチと瞬かせている。
「もご…な、いきなり何をするんだ!ザークシーズ!」
「さっきのは冗談ですヨ。冗談。」
「え?冗談?」
「心配するレイムさんが可愛かったので…いじめたくなっちゃいましタ。」
「な…心配なんかしていないし、可愛くなんかない!」
本当は冗談じゃなかったんですケド、言葉のミスだったなんて言いたくないので小さな嘘をついておく。
ほら、好きな子の前では誰だって見栄を張りたいんですヨ。
「…なら結局、ザクスの一番幸せだった時っていつなんだ?」
「あ、気になりマス〜?」
「そういう事ではない!」
「ハイハイ。素直じゃないの〜。…フフ、幸せな時なんて今さら聞かなくたって、決まってるじゃないですカ。」
…正直に言うと…実はたった今、答えが出たばかりなんですけどネ…さっきも言ったように、やっぱり好きな子……可愛い年下の恋人の前ではカッコよく見せたいんですヨ。
少々からかい過ぎてしまったらしく、少し拗ねぎみのレイムさんの顎に指をかけてクイッと上げて私の方を向かせると、レイムさんの目元がボッと赤く染まり、長身の割りに細い体が目に見えて強ばってしまった。
本当、いつまで経っても慣れませんネェ…可愛いから許しマス。
「君といる時間、それが私の一番幸せな時間なんですヨ。もちろん、出会った瞬間から今のこの瞬間まで。そしてこれから君と過ごす未来も含めてネ。」
「…っそう…か。」
「ハイ。」
そろそろ付けているイヤリングが熱で変形するんじゃないかと思うほど、耳まで赤くなってしまったレイムさんの唇にそっとキスをする。
「…レイムさん、愛してマス。」
「…知っている。」
「今日のお前はいつもに増して変だ。」と真っ赤な顔で呟くレイムさんの薄めの唇は、甘酸っぱいイチゴの味がした。
レイム。君に一つだけお願いさせてくれるかい?これからもずっと、ずっと、私の側にいて欲しい。
それが私の幸せなんだ。
「そういえば、なんでそんな事を考えていたんだ?」
「ん〜?あぁ、シャロンお嬢様に聞かれましt…」
「ザクス!!!今すぐ自分の影を確認しろ!!今すぐだ!!あとビデオカメラを探せ!!」
[後書き]
黒幕は女王様です(笑)
零武さん!遅くなってしまってすみませんでしたああぁぁっ!(スライディング土下座)
しかも、甘ったる過ぎて口から砂糖がブハァッ(^p^)
いつでも書き直しは受け付けますので!いつでも受け付けますので!!
リクエストありがとうございましたああぁっ!
シャロンお嬢様、ビデオテープ下さい(笑)