パンドラハーツ
□時は過ぎるもの
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「どうしたものか…」
バルマ家の誇る、パンドラ顔負けの情報量をもつ棚を前に、床に積んだ本に囲まれたバルマはフム…と顎に手を当てた。
取りたい本は背伸びをしてジャンプでもするか、梯子を使えば届く所にある。だが、生憎梯子は見当たらないし、前者はバルマのエベレスト級のプライドが許さない。
「…ルーファス様?」
「…………………誰じゃ?」
隣から聞こえた、青年の声に視線を投げかけたが、見えたのは書類や本の山だ。よく見ると飴の箱もある気がする。山はフラフラと危なっかしく揺れている。
「あ!わ、私です!ルーファス様!レイムです!」
「あぁ…新種の生物ではないのか…。」
「はは……、すみません。人間です…。あの…どうかなさりましたか?」
書類の山の後ろから見慣れたイヤリングが揺れている。この生真面目な青年にはあまり似合わないそれを見てバルマはフン…と鼻で笑った。
「上から7番目の右から三番目じゃ。」
バルマが質問に答えず、当然のように本の場所だけを鉄扇で指し示すと、新種の生物…もといレイムは崩れないようにゆっくりと山を床に下ろした。
「これですか?」
レイムは少しだけ背伸びをして本を手にとり、バルマに尋ねた。
……レイムが長身なのは知っていたが、こう見せつけられると腹がたつ。滅びろ身長差。
とりあえず腹いせにレイムのデコにデコピンを食らわせてやると、「ぴょっ!?」という謎の悲鳴が上がった。
「る、ルーファス様!?」
「それじゃ。」
「え、あ、はい。」
何がしたいのかが全くつかめないバルマにレイムが慌てながらもついていた埃をサッと払い、本を丁寧に渡した。
「そういう所は相変わらずじゃの。」
「はい?」
レイムは少し首を傾げた。長年仕えている上の無意識だったのかもしれない。
「全く…でかくなりおって…。」
「うわっ!」
バルマは手を伸ばしてレイムの頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でた。
「…立派にはなっていないがのう。」
「え!?」
「努力しろ。」
レイムは少し暗くなったが、「はい…」と答えた。
バルマはフッと笑うと頬に口付けた。
「…ぎょ!?ルルルーファス様ぁ!?」
「全く…褒美をやったというのに…色気のない奴じゃのう…。」
「あ、もも申し訳ありません!!」
レイムは真っ赤な顔で頭を下げた。顔を上げないのは顔を見せたくないからに違いない。
「フッ…まあよい。部屋に本を運べ。」
「あ、はい!」
慌てて顔だけを上げたレイムの顎をスッと扇子で支え、バルマはレイムの耳元に口を寄せた。
「次の褒美は着いたら与えてやろう。」
しばらく言葉の意味を考えていたレイムの耳がボッ!と真っ赤になった。バルマはさも愉快げにクックッと笑ってレイムに背を向けた。
「どんな褒美がよいかのう?」
「(ルーファス様は鬼畜なんだ…絶対そうだ…(涙))」
[後書き]
バルマがただの変人になってもうた(笑)あ、いいのか変人なのか←
え、褒美ですか?さあ、なんでしょう。ご想像にお任せしますよ(笑)…いや、僕は別に何か考えてませんから!!
続きが見たい方はリクエストしてくださいな(笑)