パンドラハーツ
□色とりどりの薔薇には
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扉が軽くノックされる音が聞こえ、「はい」と返事をして扉を開けた瞬間にレイムの視界が薔薇の花で埋め尽くされた。誰でも驚くその状況に、思わずレイムは飛び退いた。
「うわぁっ!?な、な、なんだ!?」
「ハァ〜イ。レイムさん!」
薔薇の花の後ろからヌッとブレイクがニヤニヤした顔を出した。
「…ザクスか…何なんだ、この薔薇は!」
「愛あるプレゼントですヨ!花瓶借りますネ〜」
「ちょっ…ザークシーズ!」
ブレイクは勝手にレイムの部屋に入り、鼻歌混じりにテーブルの上の花瓶に薔薇を入れた。聞く気が全く見られないブレイクに諦めたレイムはため息をつき、扉を閉めた。
さっきは近すぎて分からなかったが、薔薇は赤、白、青、黒、黄…と様々で一つ一つが目を奪われるくらい綺麗だ。
「…どこからこんなに持ってきたんだ?」
「レインズワース家の庭ですヨ。庭師が切り揃えてたので、切られそうだった薔薇をシャロン様と採ってきたんですヨ。所謂、花命救助ってやつデス!」
「花命救助なんていう言葉は聞いたことないぞ!」
レイムはブレイクに呆れながらも、しげしげと薔薇の花を見た。やはり、そこらの花よりも上品な雰囲気があるし、いい香りがする。
「薔薇ってBLを表すんですヨ」
「う、うるさい!何をいきなり言い出すんだ!お前って奴は!空気を読め!」
ブレイクという名前に恥じず、場の空気を破壊したブレイクはクックッと笑いながら白い薔薇を花瓶から抜き取った。
レイムも赤い薔薇に手を伸ばしたが、ブレイクによって阻まれた。
「…どうした?」
「レイムさんには赤い薔薇は似合いませんヨ。」
「な!?薔薇に似合う似合わないなんてないだろ!」
「いえ、ありますヨ!レイムさんは…」
ブレイクはレイムの手に持っていた白い薔薇を握らせた。棘は綺麗に取られている。
「こっちデス!」
「白?白なら…私よりもむしろザクスの方が合うんじゃ…」
「純潔。」
「え?」
ブレイクはニッコリ笑ってレイムの額を人差し指で軽く突っついた。
「白い薔薇の花言葉ですヨ。この言葉が似合うのはレイムさん以外、いないデショウ?」
「…」
ニッコリと笑うブレイクの視線から逃れるように、レイムは赤くなりかけた顔を背けた。
「私は赤い薔薇ですネ!情熱的な愛!」
ブレイクはレイムの反応を見ながらクックッと楽しげに笑い、雰囲気もへったくれもなく、赤い薔薇をブンブンと振った。
「薔薇を振るな!薔薇を!」
「フッフッフ〜。あ、じゃあ私からレイムさんにプレゼント。」
ブレイクは何も持っていない手をズイッとレイムの鼻先に持っていくと、「1…2…3」と小声で囁いた。稀に見る真剣な表情と声にレイムの心臓の鼓動が少し早まった。
ポン!!
「うわっ!…あ、青?」
レイムはずれた眼鏡を直すのも忘れ、ブレイクの手から現れた青い薔薇を見つめた。
「花言葉は奇跡…ですヨ。レイムさんに出会えて、今ここで一緒にいられる。私という人間にはあまりに恵まれ過ぎている…。」
ブレイクの声のトーンが少し暗くなり、笑顔が一瞬だけ寂しげな笑顔に変わった。
「ザクス…?」
「…プフッ…!!なんて情けない顔してるんですカ…ッ!アッハッハ…!!」
「な!何で笑っ…!!」
レイムは笑い出したブレイクに文句を言おうと口を開いたが、言いかけた所でブレイクにすかさずキスで口を塞がれた。
「レイムさんと一緒の時は、どんな時でも私にとって奇跡なんデス。」
固まっているレイムの耳元でブレイクが甘く囁いた。
その囁きでやっと意識が戻ってきたのか、レイムは真っ赤な顔でブレイクを無理やり押し返すと、さっきのブレイクの様に手をズイッととブレイクの鼻先に突き出した。
恋人とは違い、その手にはしっかりと白い薔薇が握られていたが。
「…マジックはできないからな。…し、白い薔薇のもう一つの意味なら私も知ってる。…だから…これ…が私からの返事だと思え…」
震える手から白い薔薇を受け取ったブレイクはニヤリと笑った。
「ホォー?可愛らしい事してくれるじゃないですカ。」
「う、うるさい!」
「ハイハイ。分かってますヨ〜。相変わらず可愛いですネ、レイムさんは!」
「うるさいうるさいうるさーい!!!」
賑やかで幸せな日常の奇跡の一シーンを花瓶につけられて活き活きと咲く薔薇だけが見ていた。
白い薔薇
〜私はあなたに相応しい〜
<おまけ>
「そういえば、花言葉なんてレイムさん知ってたんですネ。」
「…シャロン様に教えてもらった。」
「シャロン様に…?」
「ん、どうかしたのか?ザクス。」
「…いえ…まんまと嵌められたと思いましてネ…」
「?」
[後書き]
スランプって怖いvv←
うわあああぁ!グダグダだあああぁ!(涙)
黒幕はもちろんシャロンちゃんです(笑)多分、一角獣がどこかに…!(笑)もはや犯罪だろ、それは(^p^)
…え?黒い薔薇の意味?『ナイトレイのどぶねずみ』でしょ?(笑)