ワンピース
□視界に見えるのは?
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『ごめんね、ロー君。パパとママ、急に手術が入っちゃって…今日は帰れなそうなの…』
「いいよ。平気。大丈夫。」 『ごめんね?温かくして、ちゃんとご飯食べて寝てるのよ?』
「うん。分かった。お仕事頑張って。じゃ。」
電話を切って振り返ると、無駄なまでに広い部屋は静まり返っていて、エアコンもついているのに寒かった。ローはランドセルから薬を出して飲むと、パジャマに着替えるのも辛いほどのダルさにベッドに潜り込んだ。
視界に見えたのは白い天井だけだった。
ピンポーン
ローはダルそうに目を開くと軽く舌打ちをした。
「誰だっての…はい。」
『ヤッホー!!!俺俺!生きてる?』
『うるっせぇよ!エースてめえ!』
「………。」
玄関前の馬鹿二名の映像を見て、ローは深々とため息をついた。
「何しに来たんだよ?」
『決まってんだろ!お見舞いだよ!』
『帰れっつたら、扉壊すからな〜。』
冗談じゃない。いくらセキュリティ万全を誇るマンションの扉だって、あの馬鹿二匹の馬鹿力は想定外だろう。あの馬鹿匹なら壊しかねない。だって馬鹿なんだから。
いつもより回転の遅い頭で馬鹿馬鹿と連呼していたローは扉のロックを渋々解除した。
『お、開いた。』
『ローの心が開いたぞ!』
通りすがった同じマンションのツルが微笑ましそうに二人を見ていたが、二人は全く気付いていないようだ。
「ケホッ、全く……なんで来るんだかな…。」
よりによって、あんな夢の後に……、ローはダルい体を引きずって玄関まで歩いていった。