パンドラハーツ

□主たる者の務め
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ポン……

しばらくして頭に温かいものを感じ、レイムはそっと目を開けた。
なんということでしょう、そこには少し呆れたようではあるが、子供を見つめるような優しい笑顔を浮かべるルーファス・バルマが。
「…ルーファス様?」

「馬鹿め。使用人を支える事も主の務めの一つじゃ。ベザリウスの子も似たような事を前に言っていたがのう。」

バルマはいつも通り、見下し気味の…いや、見下したしゃべり方をしていたが、レイムの頭を撫でる手は優しかった。

「ほーれ、話してみよ。このデコデコめ。」

バルマはレイムの目を真っ直ぐ見て言った。

「わ、私は……私のチェインは…能無し…です…から…。いざというときに、ルーファス様をお守りする事が出来ないと思って…!これほど長く仕えているのに…!私はルーファス様のお役にたてていないのではないかと思って…!」

レイムは長年詰め込んできたものを勢いに任せ、ポツリポツリと…そして、滝のようにぶちまけた。
最後には、悔しさに涙が出そうになって、ぐっと堪えた。

バルマはそんなレイムを見ると、話を聞いている間も頭を撫でていた手を降ろし、両腕を彼の背中に回した。

「!?」

レイム予想していなかった展開に頭が混乱して、声にならない叫び声をあげて真っ赤になった。

バルマは子供をあやすように、レイムの背中をポンポン…と軽く叩いた。天変地異の前触れの様な優しい動作と体温に、レイムの心は次第に落ち着いていった。

「…。確かに、汝のチェインは能無しじゃのう。…だが、それが何じゃ?チェインの能力と汝の価値は違う。そうじゃろう?汝の努力は知っている。感謝もしている。もっと自信をもて。馬鹿者。汝は汝じゃ。」

バルマはそう言うと、レイムの額にキスを落とし、立ち上がった。

「汝に守られる程、我は弱くないしのう。書類整理のエキスパートにでもなればよいわ。」

煙が出る程真っ赤になって硬直しているレイムに、バルマが皮肉っぽく言った。我に返ったレイムは、涙目のままフニャッと笑った。
「はい…!」
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