青い鳥は切り刻まれて

□31〜40章
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31章 『餌付けされた鳥』





疑惑の恋人の人は、強引な同居人を睨んだ。
「私も彼を脅してます…驚きましたか?」
「…何だよ」
目を丸くして、それから強引な同居人は疑惑の恋人を睨む。
「アナタが彼を脅して手に入れたなら…簡単でしたよ。彼は私の条件を飲んだ…驚いてくれます?」
「オマエ…ッッ!!」
「オマエと俺は同じだよッッ!驚いたかよッッ!!」
どうしよう…喧嘩してる。
俺の所為?
どうしよう…俺が失敗したからだ……。
俺が倒れたからだ。
張りつめた空気。
俺が…彼の青い鳥になれなかったからだ……。
どうしよう…
どうし…
「それでも、彼は俺には心を開いてくれましたよ?驚いてくれます?」
疑惑の恋人の人の声が沈黙を破る。
「俺はオマエよりリードしてるよ。驚いたかよッッ!!」
「黙れよ…」
「彼は私に何でも話してくれますよ?驚けよッッ!!」
「知ってんだよッッ!!黙れッッッ!!」
疑惑の恋人の人が強引な同居人の胸倉を掴んだ。
「本気で言ってんだったら俺はお前を許さねぇぞッッ!!俺だって本気なんだッッ!!」
「ジャー、オマエは俺に何して欲しいんだよッッ!!」
「なら、オマエが手を引くってんなら、今すぐ…アイツをオマエの青い鳥から俺の青い鳥に変えろッッ!!変えてみせろよッッッ!!」
握った拳。
弱々しく、疑惑の恋人の人が強引な同居人の胸を叩いた。
「餌付けされた鳥が自由になったところで生きてけない事ぐらい知ってるくせに…なんでンな事すんだよ…俺が惨めだろ……」
強引な同居人は何も言えずに、呆然と立ち尽くす。
強引な同居人を掴んだままの疑惑の恋人の人の揺れる肩。
泣いてるんだ…。
「…あの入れ知恵はオマエかよ」
強引な同居人の言葉を聞いて、疑惑の恋人の人が強引な同居人を突き飛ばして出て行く。
二人きりになって、強引な同居人が俺のベッドの横に無言で座る。
それから暫くして、俺の手を握った。
俺は何も言わないで、その手を握り返した。

好き…
君だけが好きだよ。
だから彼を追いかけない。
君を待ってたんだよ?
言わなくても…届かないかな。
今の俺に、それを言う勇気なんてない。

すると彼の方が口を開いた。
「青い鳥…聞いただろ?」
俺は頷いた。
「側にいるだけで幸せになれる青い鳥…ふざけた童話だ」
俺の手を握る手に力が入る。
「手に入れるたびに失う…ふざけた童話だ」
俺は彼をジッと見続ける。
そんな俺の唇に彼は唇を重ねた。
「…告白するよ…俺もオマエが好きだ」
苦しいほどに抱きしめられる。
それから、何度もキスが降り注ぐ。
「俺が嫌いなのはオマエじゃネーよ…脅し続ける俺自身だ」
深いキス。
俺はそれに答える。
君がたとえ、君自身が嫌いだとしても俺は好きだよって。
背中に手を回して。
君が大好きだよって…。
言葉にならなくても伝わらないかな…。
俺は君を見つめた。
君の唇が俺の首筋に触れる。
何度も…。
それから甘い束縛に俺は溺れた。
君に揺らされて、俺は嬉しくて。
笑えてる?
君の顔が見えないけど…。
俺は幸せそうな顔をしてる?
嬉しくても泣いちゃうんだね…人って。
しがみ付いて、甘い束縛を受け入れて…。
俺は君だけのモノだよって伝わってるかな?
俺の涙と君の汗が交じり合う。
甘い…甘いキスをして?
二人が離れる前に、俺にありったけの…
ありったけの甘さを頂戴。
俺がすぐに君を求めてしまうように…。
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