ブック(ハピツリ)

□※道化と微笑
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計算外だった。まさか彼女に見られるなんて。
ぐちょりと生々しい音を立てて僕の手から滑り落ちた肉は誰のものかすら分からない。ぽとりと小さな音を地面に響かせたそれを、右足で思い切り踏みつけてやった。ねちょりと僕の靴にへばりつく赤い糸が不快で仕方なかったのだけど、そんなことはどうでもいい。目の前で口を手で覆い、華奢な身体を小刻みに震わす彼女に笑みを浮かべた。

「マイム…どうして、こんなこと…」
(君が好きだからだよ)
「みんな…仲良しだったじゃない…どうして…」
(君を汚い目で見た罰だよ)
「ねえ、どうして!」
(君を独占したかったんだ)
「…何か言ってよ!」

彼女も人が悪いなあ。僕が喋れないこと、知ってるくせに。くすりと笑って後退る彼女に近付く。来ないで、僕を拒む可細い声に無視をして、僕はその身を抱き締めた。

「や、」
(好きだよ)

無い声でそう囁いた。好きなんだ、君の声が、優しさが、笑顔が。だから



(全て忘れて、笑っていいよ)

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