ブック(ハピツリ)
□抱擁と微笑
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ざわざわと賑わう教室の住みには小さな人だかりが出来ていてその真ん中にはクラスのマドンナ、ギグルスがいた。ふわりと柔らかく笑う彼女に見とれつつ、昨夜眠気に負けて出来なかった予習に専念した。
(やっぱ可愛いよなあ…)
そんなことをぼんやり考えていると、いつの間にかシャーペンを持つ手が止まっていたことに気付き慌てて手を動かした。
「ギグルスー!」
ふと顔を上げると廊下からひょっこり顔を出し、彼女の名前を呼ぶ男子生徒が見えた。しかもイケメン。…まあ流石に僕程ではないけれど。
(…だけど、)
楽しそうに笑いあうギグルスとイケメン(仮)を見て予習に専念なんて出来るはずはなかった。このもやもやはなんだろう。彼女の笑顔は大好きなはずなのに、自分ではない他の誰かに向けられていることが無性に悔しかったんだ。
(その笑顔、僕だけに見せて)