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□後悔ばかりが押し寄せる(兄→潔)
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欲しいものは何が何でも手に入れてみせた。宝石や札束に囲まれた俺達の生活は幸せ以外の何でもない。貧しい奴等を見下して、優越感に浸っていた日々。金があれば女にだって不自由しない。ああ、俺はなんて幸せ者なんだろう。そう思い込むことによって本当の幸せを手に入れた気でいたのかもしれない。だけどダメなんだ。アイツと出会ってから、アイツのことしか考えられなくなって。今まで自分に落ちない女なんて居なかったから逆に興味が沸いたのかもしれない。そう、最初は興味本位だった。無駄に綺麗好きだったり、自分の意見をちゃんと述べることができる素直さとか、みんなを包み込むような優しさだとか。そんな彼女に、俺はいつしか恋心を抱いていた。だけど

「私ね、彼と付き合うことにしたのよ」

照れ臭そうに俯く彼女に掛ける言葉が見つからなかった。だから適当におめでとう、それだけを告げると彼女は俯いていた真っ赤な顔を上げて可愛らしく笑ってみせた。

「ありがと、シフティには一番に伝えたかったの」
「そっ、か」

はは、乾いた笑いを部屋に響かせた。ズルいや、何でアイツなんだよ。何で俺じゃないんだよ。欲しいものは何だって自分の物にしてみせた。それなのに、

「ねえ、彼と上手くいくように応援してくれる?」

もしここで、いやだと答えたらきっとお前を困らせてしまうよな。俺の口から滑り落ちた言葉はもちろんイエスだった。



(何がいけなかったのか何を悔やめばいいのか)
(それすらも分からない)


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