ブック(ハピツリ)
□青鹿と羊肉
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「ランピーさん、そんなに落ち込まないで」
「う、でもまた俺のせいで可愛い子供たちを死なせてしまった…」
「ランピーさんのせいなんかじゃないですって」
しゅんと身を縮める彼にわたしは慰めの言葉を掛けた。やがて潤んだ瞳が此方を向き、わたしは思わず胸をきゅんと高鳴らせた。よく見ると可愛い顔立ちだな、とか肌が綺麗で羨ましいなとか見入っているわたしに彼は不思議そうに顔を傾けた。
「どうせみんなこうなる運命なんですから」
「でも…」
「死ぬ時間が少しだけ早まっただけ、」
わたしはこういう部分が冷めていると思う。うん、一応自覚はしてる。だってこんな町にいれば命を落とすことなんて当たり前だし、彼みたいに一々へこんでいたらキリがない。でも、こんな風にちゃんと落ち込んだり罪悪感を感じる彼は何だかんだで優しいと思う。
「もう、良い大人が恥ずかしい…いい加減元気出して下さいよ」
「だって、」
ひょっとして泣いてる?ぽたぽたと彼のズボンの色を変えていく液体は紛れもなく涙だった。そんな彼に掛ける言葉が見つからないわたしは何を思ったか、いつもより何倍も小さく見える彼を優しく抱き締めた。
「ラミー?」
「泣かないで下さい」
わたしはいつもの元気な貴方が好きですよ、耳元でそう囁けば顔を真っ赤にした彼と目があった。
(誰も知らない彼の素顔に、)
少しだけ、ときめいた気がした。