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□少年はそれを恋と知らずに走り出す(歯臆)
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※学パロ

すすり泣く声が聞こえて振り替えると小さな身体を更に縮める背中が見えた。紅く、長い髪を見て気付いたが多分あれは同じクラスのフレイキーだ。スルーしてしまおうかと悩んだ後、さすがに泣いている女の子を無視するのは少し気が引けたので、仕方なく声を掛けることにした。

「何で泣いてんの?」
「ふぇ?…ひっく、あっ…同じクラスの…?」
「トゥーシーだけど」

クラスメートの名前くらい覚えとけよ、内心で愚痴を垂れながらもしゃがみこみ、彼女の様子を伺う。すると、

「あ、怪我してんじゃん」
「転んで…凄く痛いの」
「仕方ないなあ…はい」

彼女に背を向けて両手を広げる。ちらりと後ろを見ると案の定、頭にクエスチョンマークを浮かべる彼女がいて。僕は小さくため息をついた。

「保健室まで、おぶってくから」
「え?いいよ…」
「早く」
「……うん、」

そう急かすと彼女は観念したように素直に身体を預けた。彼女の両足をしっかり持ち立ち上がる。予想以上の軽さで一瞬戸惑うものの、彼女の痛々しい傷跡を見て全力で走り出した。

「わっ、トゥーシーくん…速いよっ」
「怪我…思ったより酷いし…急いだ方がいいかなって。血も出てるし」

息が切れてきて言葉も途切れ途切れだったため、ちゃんと伝わったか不安だったけど今はそれどころじゃない。全く僕って奴は変な所でお人好しなんだよなあ、微かに苦笑いを浮かべた。

「あの、トゥーシーくん」
「…なに?」
「あ、ありがとう!」
「!」

驚いて立ち止まる。ゆっくり振り向くと、すぐ側に優しく微笑む彼女の顔が合って―

「――っ、ばか…」

じんわりと熱を帯びる顔を隠すように、止めていた足を再び動かせた。




(何なんだこの気持ち!)

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