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□放課後の実験室(蟻潔)
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僕にとって彼女は正に"高嶺の花"であった。
美しい容姿に鈴の音のような綺麗な声。彼女はこの町で1、2を争うほどの美女だった。それに比べて僕は蟻に虐殺されるはすぐキレるは本が友達だわで周りからの評判は決して良いものではない。小学生の時、そんな僕に周りがつけたあだ名は眼鏡だった。酷すぎる。そのまんまじゃないか。だったらがり勉とかの方がまだマシだ。さて、そんな人気者の彼女と小学生時代あだ名が眼鏡だった僕が釣り合うとでも?ありえないありえない。自覚はしてる。だけど、

「これは何を作ってるの?」

放課後の実験室。僕は学校が終わると決まってここで実験をしている。いつもは一人なのだが、今日は珍しいことにお客が一人。それは彼女、ペチュニアさんだった。

「あの…ペチュニアさん…高校生ですよね?何故中学校に…?」
「もちろんスニフくんに会いに来たのよ?」
「―――え、」

心臓が跳び跳ね動揺のあまり僕は試験管を落としてしまいそうになる。危ない危ない。

「なんてね、ちょっと母校に遊びに来たかっただけ!」
「…なっ!」

くすくすと笑う彼女を見て僕は真っ赤な顔を背けた。全く、何て人だ。本人はただ楽しんでるだけみたいだけど、僕は本気にしてしまったではないか。期待、してしまったではないか。

「ふふっ」
「何がおかしいんですか」
「ううん、別に。ねえ、何作ってるの?」
「さっきも聞きませんでしたか、それ」
「スニフくん教えてくれなかったじゃない」
「…そんなに知りたいんですか?」
「うん、教えて?」

両手を合わせて可愛らしくねだる彼女からさりげなく視線を外す。彼女には悪いけど、

「駄目。教えられません」
「えっ?何で?」
「……」
「教えてよー」

教えて教えてと駄々をこねる彼女を見て思わずため息がもれた。

(全く…)

「ペチュニアさんに、」
「へ、私?」
「振り向いて貰うために惚れ薬を作ってるんです」
「!と、年上をからかわないの!」

ほら、やっぱり信じてくれないじゃないか。苦笑いを浮かべ、手元の液体をかき混ぜる。ちらりと彼女の様子を伺うと頬を真っ赤にしたペチュニアさんが見えて、思わずぎょっとなる。あれ?ひょっとしてちょっとでも意識、してくれたのだろうか?だとしたら凄く大きな進歩だ。一人で喜びを噛み締める。

「そんなの作んなくても…」

微かに聞こえた彼女の独り言、内容を把握するには声が小さすぎた。どうせ大した事じゃないだろうし、聞き返すのも面倒だ。僕は再び残り少ない時間を実験に集中した。



(もうとっくに惚れてるわよ!…なんて言えない…)
(?ペチュニアさん?)

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