終わりのメモリーズ
□第一話 事実は小説より奇なり
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「いやいやいやいやいや……いやいやいやいや! そんな訳ねーだろ! アレだよアレ、3D映画! 最近のCG技術の発展は目覚しいものがあるからさあああ!」
慌てて顔を引きつらせつつ笑顔を作り、銀時の言葉を否定する。
「あ、ああそーだな! それにしてもスゴイ迫力だなー! 何かが飛び出すどころか、中に出されちゃったよ! 大丈夫なの映倫的に。いやホントスゲー臨場感!?」
そういいつつ銀時はお供え物の団子を見た。
「団子なんかもホラ……食べられそうなくらいリアルで……」
いいつつ銀時が団子を食べる。
食べられたよ……。
銀時が呆然とした顔で団子が刺さっていた串を見る。
「ああホラ、団子ぐらい食えるだろ! だって3Dって元々三つの団子って意味だろ? そんなんだっただろ? 大丈夫だ、うん、これは絶対3Dだって!」
必死で銀時に言いながら慰めようとしていた時だった。
不意に人の気配がした。
俺と時間泥棒は俺の墓、銀時は自分の墓の裏手に思わず隠れる。
「おやおや、アイツの供え物がなくなってらぁ。そういやアンタも昔私の旦那の供え物盗み食いしてたっけねえ。まさか墓場に入って同じ目に遭うとは……これも因果応報ってやつかねえ」
聞こえてきたのはお登勢さんの声だった。
どうやらお登勢さんは銀時の墓参りに来たらしい。
と思っていたら、お登勢さんは俺の墓にも手を合わせて一礼したのが見えた。
お登勢さんは俺の墓と銀時の墓の間に立つ。
「今頃、二人であの世で仲良くやってんのかねえ……」
お登勢さんの声はどこか活気がなくなっているような感じがした。
「早いもんでアンタたちが死んで五年。この町もアンタたちがいたころとはすっかり変わっちまったよ……。今のこの町見たら……アンタたちは一体なんて言うだろうね」
お登勢さんはそう呟いた。
――俺たちが、死んだ?
五年後の世界?
じゃあ俺たちはタイムスリップでもしてしまったと言うのだろうか。
「ああそうだ、雪光。あんたに供え物持ってきてやったよ。私が用意したものじゃないけど……アイツは今直接アンタの墓場に来れるような状態じゃないから、代わりにね」
言いながらお登勢さんは何かを俺の墓に置いて、墓場を去っていった。
俺と銀時は墓の裏から出た。
その後俺は自分の墓に置かれたものを確認する為に自分の墓を見た。
するとそこには……。
――特大のマヨネーズが入ったボトルが置かれていた。
……あれ、これお登勢さんに預けた奴一発で分かっちゃったんだけど。
「……いらねー……」
自分の墓に置かれたマヨネーズのボトルを見て苦笑した。
でもまあ、"アイツ"はどうやらこの五年後とやらの世界でもちゃんと存命しているらしい。
それはそうだ、きっと唯じゃ死なない男だ、アイツは……土方十四郎は。
「……それにしても銀時、さっきのお登勢さんの話って……」
呆然としている銀時に話しかけてみると、銀時はハッとしたような顔でこちらを向いた。
「とりあえず、町に行ってみようぜ? あのババアの言葉も気になるしよ……」
「そうだな」
銀時の提案で俺と銀時はとりあえずかぶき町へ向かうことにした。