終わりのメモリーズ

□第一話 事実は小説より奇なり
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 俺と銀時は当ても無くかぶき町を歩いていた。

 いや、かぶき町だった場所――と呼ぶべきなのかもしれない。

 俺たちの住んでいたかぶき町はすっかり様変わりしてしまっていた。

 辺りのビルや民家の大半は半壊、もしくは瓦礫の山となっていた。

 町の象徴とも呼べるであろうターミナルは上半分がへし折られて完全な廃墟となっていた。

 何があったらこんなになっちまうって言うんだよ……。


 町が廃墟のような状態になり、人は路地のあちこちに座り込んでいたり、倒れたまま動かなかったりしていた。

 それに妙だ。

 そうして倒れている人間は皆一様に白髪頭をしていた。

 一気に老け込んでしまったような、そんな感じがした。


「これ……3Dでも映画でもねえんだよな……」

 重い口調で銀時が口を開く。

「……そうらしいな」

 俺も辺りを見回しながら言う。

 ぼろぼろの着物を着た幼い女の子が、不安げにこちらを見つめているのを視界に捕らえた。

 しかし目が合うと女の子はすぐに走り去ってしまった。

「この世界って……一体何なんだよ」


「――紛れもない現実です」


 銀時の呟きに答える声が背後から聞こえた。

 後ろに振り向くとそこには時間泥棒が立っていた。

「いや、現実では少し語弊がありますね。銀時様、そして雪光様にとってはいずれ来るべき現実、と言った方がよろしいでしょうか……」

 時間泥棒はそう続ける。


「お――お前喋れたのかよおおおお!?」


 とりあえずそう突っ込んでおいた。

「え!? 何!? てっきり魔女宅のパン屋の親父みたいなジェスチャーキャラでいくのかと思ったら、喋れるんじゃん! つーか何突然ワケわかんねえこと喋りだしてんの!?」

 続いて銀時が時間泥棒に詰め寄る。

「雪光様、銀時様、残念ながら私は映画泥棒でもおソノさんの旦那さんでもありません。私は銀時様をこの世界に呼び出すためにある方に作られた、時空間転送装置、通称"時間泥棒"。要するにタイムマシンです」

 時間泥棒はそう俺たちに説明した。

 ――ホントに時間泥棒って名前だったんだな。

「つまりこの世界はアナタ方が先ほどまでいた世界の五年後の世界。いずれアナタ方が……世界が辿る、すべてが終わった未来の世界です」

 時間泥棒は更に続ける。


「おい、ちょっといいか? さっきお前銀時をこの世界に呼び出すために作られたって言ってたよな? じゃあ何で俺までこっちの世界に来てんだよ」

 ふと疑問に思い時間泥棒に聞いてみた。

「それは……アナタが必要だと判断した、私を作った方による判断です。私を作った方はある方に頼まれて私を製作したのですが、その時に作った方が、アナタも銀時様と一緒にこちらの世界へ連れて行くべきと判断したのです」

「成程な……」

 時間泥棒の答えを聞いて腕を組む。

 時間泥棒みたいな装置を作れる奴なんて平賀源外とかいうジジイしか思いつかねえけど……あのジジイに時間泥棒を作るよう依頼した奴ってのは何者なんだ?


「ここが……五年後の世界……すべてが終わった俺たちの……未来……」

 銀時が町を見回しながら呻く。

 改めてみても信じられなかった。

 こんなに荒廃した場所が五年後のかぶき町だなんて……。

 新八や神楽……他の奴らや晴曲組の奴らはどうしちまったんだ?




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