終わりのメモリーズ
□第一話 事実は小説より奇なり
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「オイオイ兄ちゃんたち、道の真ん中で何やってんの?」
不意に後ろから声をかけられた。
銀時の両肩から手を離して声のしたほうを向くと、いつの間にか俺と銀時がバイクに乗った集団に取り囲まれていたことに気付いた。
俺たちに声をかけてきたのはマスクを付けたモヒカン頭の男だ。
いかにもザコの悪役みたいな感じの風貌だ。
某世紀末漫画とかに出てきて、主人公に秘孔突かれて「あべし!」とか言いながら爆発する奴みたいな。
ついでにそいつが引き連れている他の男たちも皆同じような風貌をしている。
そういやこいつさっき時間泥棒のカメラを轢いたバイクに乗ってなかったか?
「あの変なカメラ、兄ちゃんたちのだろ? お陰で俺の自慢の愛車のボディに傷が付いちまったよ。修理費として有り金全部置いてってくれる?」
そう俺たちに声をかけてきた男が言う。
――つーかなんだよコレ!
今更だけどモブですら別物に豹変してんじゃねえかよ!
これこそ某世紀末漫画だろ!?
『北斗の銀』って感じにマジでなってんじゃねえかよ!
「あの、すいませんでした。勘弁してください。俺たち今混乱しててそれどころじゃ……」
銀時が呆然としつつもモヒカン野郎に頭を下げる。
「ほんとすいません。マジで」
俺も便乗して頭を下げた。
今はこんなモブ野郎の相手してる場合じゃねえしな。
「んー? アニキ、こいつらマスクしてねーぜ」
俺たちの顔をみたモブの一人がさっき俺たちに声をかけてきたモヒカン野郎――アニキに声を掛けてくる。
「うわ、正気かよ。江戸をマスクなしでうろつくなんざ小倉さんが台風に飛び込むようなもんだぞ」
アニキが言う。
「ひょっとしてこいつら白詛知らねえんじゃねえのか」
別のモブが言った。
ハクソ? 聞いた事のない言葉だ……。
「え? ハクソ?」
銀時も首を傾げる。
「ハクソって……あ、オタクらブサイクな面隠してるんだと思ってたけど、歯磨き忘れてたのかよ」
合点がいった。
俺は頷く。
「歯糞じゃねえ! 白詛(びゃくそ)だ! 舐めてんのか!」
うわ、アニキブチギレしちゃったよ……。
他のモブたちが俺と銀時を見つつ話始める。
「マジかよこいつら。白詛も広まってねえど田舎からのおのぼりさんらしーぜ」
「道理でアホ面でうろついてるはずだ。――オイ、ついでに着てるモンも全部置いてきな。特にそっちの灰色のスーツの奴。ホストみてーなカッコしやがって」
モブの一人が言いながら俺を指差した。
いや、俺ホストじゃなくて実業家なんだけど……。
ハクソ? ビャクソ? だが何だか知らねえが、どっちにしろこのモブ共俺たちをこのまま解放する気はなさそうだな……。
「――銀時」
銀時に目で合図をして、俺はジャケットの内ポケットに忍ばせてあった拳銃に手をかける。
護身用兼脅し用の拳銃がようやく役に立ちそうだ。
銀時も俺の意を察したのか俺に向けて頷き、木刀に手をかける。
――強行突破するしか道は無いらしい。
その時だった。
「止めておけ」
別の誰かの声がした。
このモブたちの声では無いらしい。
声のしたほうを向くと一人の男がこっちに歩いて来ているのが見えた。
笠を被り、革のコートを着ている。
こちらからでは笠のせいで顔はよく見えない。
「こんな星に物見遊山に来るとは、よっぽど度胸があるのか、よっぽどのうつけ者か。死にたくなければ帰れ」
冷たい声で男が続ける。
「田舎者だろうがゴロツキだろうが、これ以上この町を汚すことは俺が許さん。最も、白詛がマスクなんぞで防げるなどと言う迷信に踊らされているようでは、どちらが田舎者か知れたもんじゃないがな」
アニキやモブたちを見つつ男が言い放った。
「なんだとてめえェェェ!」
アニキが怒鳴る。