終わりのメモリーズ

□第一話 事実は小説より奇なり
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「ナメた真似してんじゃねーぞ!」

 他のモブたちも男に向かって叫んだ。

 男はモブたちに向かって歩き続ける。

「早く行け。ここは俺が引き受ける」

 俺と銀時の横をすり抜ける時、男は確かにそう告げてきた。

「ナメやがって……」

 アニキが手にしていた刃物を構える。

「あのコートの反抗期も纏めてやっちまえぇぇぇぇ!!」

 アニキのその指示に他のモブたちが一斉に男に飛び掛った。

 俺と銀時は男を取り囲むモブたちから少し離れて様子を見守る。

 男は静かに腰に差していた木刀を抜く。


 その木刀の柄に彫られた文字は――洞爺湖。


 銀時の持つ木刀と全く同じだった。

 というより、銀時の持つ木刀そのものに見えた。

 あいつ誰だ?

 なんであいつが銀時の木刀を?


 男は素早く木刀を抜いて襲いかかってきたモブたちに斬りかかる。

 洗練された無駄の無い木刀捌きで、あっという間にモブたち数人を倒してしまった。

「何だコイツ……バカ強え!」

 アニキがうろたえた。

「ん? ちょっと待てお前……その木刀……そしてその眼鏡は!」

 別のモブが声を上げる。

 その時男が笠の紐に手をやる。

 俺や銀時、モブたちがそれを見守る中男は笠を取る。

 笠が宙に舞い、笠の下から眼鏡をかけた切れ長の目をした男が姿を現した。

「ギャーギャーギャーギャーやかましいんだよ。発情期か貴様ら」

 言い放ち、男が眼鏡のブリッジを指で上げる。


「よ――万事屋だああああ! 万事屋新八っさんだァァァ!!」


 モブたちが叫んだ。

 ……って、は?


 俺と銀時は何もリアクションが取れない。

 何というか、衝撃が大きすぎるというか……衝撃的過ぎて声を上げる事すら出来ないような感じだった。


「あれが最近巷のゴロツキ狩りまくってるっつー何でも屋か!? 勝てるワケねえ……」

 モブの一人が弱音を吐いた。

「バカ野郎、びびってる場合か! 一人に怖気づいてんじゃねえ! 全員でフクロにしちまえええ!!」

 アニキが叫ぶ。


 ――っつーか……。


 万事屋新八さんって誰ええええええ!!


 ひょっとしてアレか?

 俺や銀時の知ってる"人間をかけた眼鏡"が五年でああなっちまうっつー事?

 改めて俺と銀時はモブたちと戦う男を見る。

 そこで俺たちは顔を見合わせて……。

「ねーよな」

「ああ。ねーわ」

 俺と銀時はうなずきあった。


 いやいやいやいや知らねえ!

 俺たちはあんなキャラしらねえ!

 あんな青学の柱知らねえ!!

 俺や銀時の知ってるダメガネのツッコミ野郎がこんな男前なアクション出来る訳ねーだろ!!




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