終わりのメモリーズ
□第一話 事実は小説より奇なり
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爆発音と爆風が起こった。
それによってモブたちが悲鳴を上げつつ吹っ飛んでいく。
「なんだあああ!?」
アニキが動揺する。
「雑魚相手に何モタついてるのよ」
静かな女の声が上から聞こえてきた。
近くのビルを見上げると、その屋上に一人の女が立っていた。
逆光のせいで顔は良く見えない。
女は唐傘を担いで巨大な何かに跨っていた。
「その程度で万事屋を名乗るなんて百年早いんじゃないの」
女はそういいつつ跨っていた動物――巨大な白い犬。どっかで見たことある――から降りて唐傘を開き、こちらに飛び降りてきた。
危なげなく地面に着地した女の背後に白い犬も着地する。
「あの傘……巨大な犬……」
モブの一人が声を上げる。
新八――らしい男が女を見て舌打ちをした。
「うるさいのが又増えた」
舌打ちをした後新八もどきが呟く。
「ぐ……ぐらさん……万事屋ぐらさんと定春だああああ!」
モブの声と同時に女は唐傘の角度をずらす。
唐傘を差していたのはオレンジ色の髪に青い目をした女だった。
豊満な乳房と雪のように白い肌。
着ている白いチャイナドレスの裾には銀時の着ている着物の紋様と同じものがあしらわれていた。
――っつーか、ぐらさん……?
「万事屋ぐらさんって、女だてらに最近江戸で暴れまわってるっていう何でも屋か!?」
別のモブが声を張り上げる。
再び俺と銀時は硬直する。
ぐらさん……!?
ぐらさんって、俺や銀時の知ってる、"人間をかけている"グラサン(長谷川)がこれえええ!?
心の中で叫ぶと、俺は万事屋ぐらさんによって顔面に蹴りを入れられた。
その衝撃で俺の隣にいた銀時の顔面に丁度俺の後頭部がぶつかり、俺は銀時の上に折り重なって倒れた。
「ごふうっ!」
銀時が後ろでうめき声を上げた。
「わ、悪い!」
慌てて起き上がって銀時を抱き起こす。
「来て早々何やってんだ」
「いや、なんか、こいつに腹ん中でコケにされた気がしたから……」
新八もどきの問いにぐらさんが返した。
つーかひょっとしてこのぐらさんってアレか?
俺や銀時の知ってる、食い気だけで全く色気の無い「フライドチキンの皮よこせコルァ」とか言ってたあの声優の無駄使いで定評のあるゲロインか……!?
五年経ったらあんなむっちりした俺好みの体型のおねーさんになっちまうのかよ……。
……あ、一応俺銀時一筋だからな!?
ちょっといいかもとか、絶対思ってねえからな!?
「言っとくけど……私は別にアンタら助けに来た訳じゃないから」
「たまたま酢昆布買いに通りかかっただけだから、勘違いしないでよね」
ぐらさんは俺たちにそう言い放つ。
声優使いこなしちゃってるよ……!!
ツンデレっつーか「勘違いしないでよね」に定評のある釘宮理恵を使いこなしちゃってるよ!
あ、これ小説だから脳内再生よろしく!
呆然としている銀時と再び顔を見合わせる。
「知らねーよな」
「ああ。全然知らねー」
俺の問いに銀時が返す。
やっぱそうだよな、知らねえよな!!
あんな白服のおねーさん俺たちは知らねえよな!!
事態にやや付いていけない俺たちの前で、モブたちも慌てふためいていた。