Novel-bullet 2(CP)
□秘蜜〜真紅の誓い〜 2
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「――私と、一緒に来てくれますか?」
ミクリアは、静かにそう言った。
――不思議と躊躇いはなかった。ただ、婚約者の事が頭を掠めた。ここでミクリアと共に行くということは、全てを裏切るということ。両親も、婚約者も。俺の婚約を祝福してくれる人たち全員の期待を、裏切るということになる。
だが、許されない思いを募らせながらも。
本能のままに俺は、ミクリアの手をとっていた。
「行こう」
「ええ」
そして、俺とミクリアは走り出す。
その時。
「カイル!? どこへ行くの、カイル!」
背後から、悲痛な婚約者の声がした。けれど、もう俺の中に迷いはなかった。ミクリアには、初めて会ったとは思えないほど何か惹かれる何かがあったのだ。
「あ……」
婚約者の声に気づき、ミクリアが足を止めてこちらを見る。
「……行こう」
俺がミクリアに言った。するとミクリアは再び俺の手を引いて走り出した。
「カイル! 戻ってきて! カイル!」
俺の耳に婚約者の声が響いた。罪悪感は芽生えるものの、今はもうミクリアと共に行くことしか考えられなかった。
そして俺は、全てを裏切った。
俺とミクリアは、この島と大陸を結ぶ連絡船に乗るべく港の方までやって来た。
「……すみません、突然一緒に来て欲しいなんて……」
ミクリアが俺に言った。
「いや……いいんだ。俺も、何でか分からないけれど君に……惹かれたから」
俺の言葉に、ミクリアはひどく意外そうな顔をした。
「……私に?」
ミクリアの問いに俺は頷く。
「……嬉しい」
ミクリアは少し頬を染めて微笑んだ。笑った顔は、とても可愛らしかった。