Novel-bullet 2(CP)

□秘蜜〜真紅の誓い〜 2
3ページ/3ページ



「――私と、一緒に来てくれますか?」


 ミクリアは、静かにそう言った。



 ――不思議と躊躇いはなかった。ただ、婚約者の事が頭を掠めた。ここでミクリアと共に行くということは、全てを裏切るということ。両親も、婚約者も。俺の婚約を祝福してくれる人たち全員の期待を、裏切るということになる。



 だが、許されない思いを募らせながらも。



 本能のままに俺は、ミクリアの手をとっていた。



「行こう」

「ええ」

 そして、俺とミクリアは走り出す。


 その時。


「カイル!? どこへ行くの、カイル!」


 背後から、悲痛な婚約者の声がした。けれど、もう俺の中に迷いはなかった。ミクリアには、初めて会ったとは思えないほど何か惹かれる何かがあったのだ。


「あ……」

 婚約者の声に気づき、ミクリアが足を止めてこちらを見る。

「……行こう」

 俺がミクリアに言った。するとミクリアは再び俺の手を引いて走り出した。


「カイル! 戻ってきて! カイル!」


 俺の耳に婚約者の声が響いた。罪悪感は芽生えるものの、今はもうミクリアと共に行くことしか考えられなかった。


 そして俺は、全てを裏切った。



 俺とミクリアは、この島と大陸を結ぶ連絡船に乗るべく港の方までやって来た。


「……すみません、突然一緒に来て欲しいなんて……」

 ミクリアが俺に言った。

「いや……いいんだ。俺も、何でか分からないけれど君に……惹かれたから」

 俺の言葉に、ミクリアはひどく意外そうな顔をした。

「……私に?」

 ミクリアの問いに俺は頷く。

「……嬉しい」

 ミクリアは少し頬を染めて微笑んだ。笑った顔は、とても可愛らしかった。




前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ