Novel-bullet 2(CP)
□午後の紅茶は下僕と共に
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ある日の午後。
僕が食堂へ行くと、そこには珍しく彼の姿があった。
「あ……十神くん」
僕は彼――十神白夜に声をかけながら、十神くんのもとへ近づく。
「……」
十神は読書に夢中で、僕の声には気づいていないようだ。いや、彼の事だから、意図的に気づいていないフリをしているのかもしれないが。
僕が大分十神くんのもとへ近づいた、その時。
「おい、苗木」
不意に十神くんは顔をあげ、僕の方を向いた。やはり、僕の存在には気づいていたようだ。
「な、何?」
「ちょうどいい、今すぐ紅茶を持ってこい。三分以内だ」
十神くんはそれを告げて、再び本に視線を戻した。彼の言うことは大多数が本気だ。取りあえず僕は食堂に隣接した厨房に行き、紅茶を作り始めた。
紅茶を作り終え、僕は十神くんのもとに戻る。手には紅茶の入ったポットと、砂糖とミルクが入った小瓶二つ。それから空の白いカップが載った黒いトレイを持っていた。
「はい、お待たせ」
僕はトレイを食堂のテーブルに置き、十神くんの前にポットなどを並べ始めた。
「遅いぞ苗木、一分の遅刻だ」
十神くんが読んでいた本を閉じた。そして十神くんは、空の白いカップに目を向ける。
「……苗木。なぜカップが二つなんだ?」
十神くんがそう尋ねてきた。
そう。トレイに載せて持ってきた白いカップは、二つだった。