Novel-bullet 2(CP)
□秘蜜〜真紅の誓い〜 2
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僕は堕天使の領域に訪れていた。
理由は一つ。
カイルと結ばれるためだ。
天使と人の恋は許されない。けれど天使が堕天使と契約を交わし堕天することでそのしがらみから解き放たれ、人と結ばれることが出来るのだ。
僕が堕天使のもとに訪れたのは、堕天使と契約を交わす為だ。
「天使がこんな所に何の用事?」
堕天使の領域に入った僕に、一人の堕天使が声をかけてきた。堕天使の証である黒い翼を持った、金髪にショートヘアの堕天使だ。
「僕はカムイ=ガスト。堕天使と契約をしに来たんだ」
僕が言ったその時。
「堕天使と? 妙な天使もいるんだな」
別の声が上から降ってきた。羽をはためかせた別の堕天使が宙に浮いており、やがて僕の前に降り立った。最初に僕に声をかけてきた堕天使とよく似た堕天使だ。
「俺はレミーユ=モルツィア。こっちはリリーネ=モルツィア。俺の双子の姉だ」
宙にいた堕天使が自己紹介をした。リリーネとは、最初僕に声をかけてきた堕天使の事のようだ。
「で、何で契約を?」
レミーユが僕に尋ねる。
「……人間と結ばれるためだ」
僕が言うと、リリーネは驚いたような顔をした。
「人間と? それだけの為に堕天するって言うの?」
リリーネが僕に問いかけた。
「……僕は、本気でその人間を愛しているんだ」
僕が答えると、リリーネとレミーユはよく似たその顔を見合わせた。
「……本気、って訳だね」
やがてレミーユが僕の方を向く。
「それなら、あたしたちがあんたと契約をしてあげる」
リリーネも僕を見た。そしてリリーネとレミーユが両手を前にかざす。すると、僕の立つ地面に紫の魔法陣のようなものが浮かび上がり、紫の光を発し始めた。僕の体が、紫の光に包まれる。
「天使、カムイ=ガスト。汝は全てを鎖(とざ)す深淵の神、サタンに忠誠を誓うか?」
レミーユが詠唱する。この問いに了承の返事をすれば、契約は成立だ。
「はい」
僕は、はっきりとそう答えた。すると僕の体はまばゆい紫の光に包まれ、それと比例するかのように僕の意識は闇へと落ちていった。
そして僕は、堕天した。