終わりのメモリーズ

□第一話 事実は小説より奇なり
1ページ/8ページ



『劇場版銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』


 というタイトルがスクリーンに映し出される。

 そして画面は変わり、江戸のターミナルの映像、さらには空を行き交う宇宙船の映像になった。

 そこに新八のナレーションが被さる。

『侍の国、僕らの国がそう呼ばれていたのは今は昔の話――』

 え? 何? ちょっと何コレ……なんか始まっちまったぞコレ。

 俺が戸惑う間にもナレーションは続く。

『かつて侍たちが仰ぎ、夢を馳せた江戸の空には、今は異郷の舟が飛び交う』

 おいおいマズイぞ……完全に『劇場版銀魂』盗撮されてんじゃねーかよ。

『かつて侍たちが肩で風を切り歩いた町には、今は異人がふんぞり返り歩く』

 いや、どこで盗み取ってきたのかしんねーけど、こんなのネットにでもアップされたら打倒け●おんの夢パーじゃね? 

 マズくね?


『ソレが僕らの世界、僕らの町、江戸である。侍たちが剣も誇りも失った時代――』


 つーか今『完結篇』って出てただろ。

 俺って完結篇の夢主だろ?

 何普通に本編始まってんだよ。


『だがしかし、そんな時代に己の侍魂を堅持し生き続ける男が一人』

 は?

 そういう感じなのかよ……。


『ラストサムライ――坂田銀時。そう彼が呼ばれていたのも今は昔の話――』


 ――ん?

 昔の話?


 そこで俺は自分が今いる場所に気付いた。


 ――墓場だ。

 近くには銀時はおらず時間泥棒が倒れていて、近くにある墓石には――。


「碓井雪光」の名前が刻まれていた。


「いやいやいやちょっと待てええええええっ!!」

 銀時の生死を確認する前に自分の生死確認しちゃったよ!!

 つーか何勝手に死んでんだよ!?

 第一話開始して一ページも過ぎてないのに夢主死んじまったよこんな夢小説アリかよ!!


 その時だった。

「いや、待たんかいいいいいいい!!」

 すぐ隣で銀時の絶叫が聞こえた。


 見ると、俺の名前が刻まれた墓の隣の墓の前で呆然と立ち尽くす銀時がいた。

 銀時が見つめる墓石を見てみると、そこには「坂田銀時」の名前が刻まれていた……。

「二人とも死んでんじゃねえかよ!!」

 突っ込まずに入られなかった。

 そして銀時が時間泥棒に頭突きをかます。

「な、何じゃこりゃあああああ! 永遠なれって、ほんとに永遠のお別れになってんだろーが! 死んでんじゃん! 俺と雪光死んでんじゃん! 完結篇って、ホントに銀さんも夢主も完結してんだろーが! 劇場版だからって何はしゃいで勝手なことやってんの!?」

 銀時が叫ぶ。

 もう一度自分の墓と、すぐ隣にあった俺の墓を確認する。

「碓井雪光」と「坂田銀時」。

 刻まれている墓の名前は変わらない。

「いや聞いてねーよこんな話! これあれじゃねーの!? 俺と銀時が色々ありながらもイチャコラしてキャッキャウフフする話じゃねーの!? ナルトだって死すって言ってたのに生還したし、ヤマトだってさらば言ってたのにキムタクになったし! こういうのは煽るだけ煽って大丈夫とかそういう感じだろ!? つーかいくら夢小説だからってはしゃぎすぎじゃねえの!? まさかコレが原作映画とまったく同じ話だっつーのかよ!?」

 更に俺が叫ぶ。

 俺たちが時間泥棒に捲くし立て続けたが、時間泥棒は何も応えなかった。

「……どーする? 銀時」

「どーするもこーするも……そういやその墓、ホントにお前の墓なんだよな?」

 銀時が俺に聞いてきた。

「ああ。ちゃーんと碓井雪光って書いてあらあ。そっちもホントに銀時の墓みてえだな」

 俺が返す。

 けれど墓が銀時と隣同士っていうのは……あながち悪い気はしないかもしれない。

 ホントに俺が死んだら墓は銀時の隣にしてもらおう。

「そういや俺らさあ……さっきまで劇場にいたよな? 新八や神楽だっていたし……。何でこんな墓場なんかに来てんだよ」

 俺は改めて周りを見回した。

 そこには劇場の中とは似ても似つかない景色が広がっている。

 周囲に広がる森に都会の喧騒から少し離れた神聖で落ち着いた空気。

「劇場つーか……俺ら、劇場版の中に入ってね?」

 冷や汗に塗れた顔で銀時は聞いてきた。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ