冬眠蛙の夢の先

□厳島
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知ってる。
あたし、知ってるよ。
姉上はあたしの事を「世間知らず」とか「物を知らない」とか散々馬鹿にするけど、確かに姉上より知ってる事は少ないけど、流石に知ってる。
料理は壊滅的に下手くそだけど、流石に知ってる。


鶴姫「孫姉さま、見て下さい!これが安芸の名産、牡蠣です!」

孫市「ほう、これが・・・」


鶴ちゃん、それサザエや!!!


厳島でお宝発見!


松永ヒロシにくっついて、越後を荒らし、尾張で暴れてやってきたのは就様のお膝元・安芸。
安芸といったら厳島神社でしょー、と観光気分で訪れれば、干潮で現れた干潟で潮干狩りをする美少女と美女の二人組。
美少女こと、鶴姫が自信満々に高く掲げた手に握られていたのは、真ん丸と大きな巻貝・栄螺。
しかし、台詞はそれとはかけ離れ、広島名物の二枚貝の名前を叫んだ。
それを見ていた美女こと雑賀孫市はそれを訂正するどころか、関心する始末。
誰かここにツッコミを・・・。


蒼「松永さん、どうするの・・・・って、あれ?!マイペースヒロシは一体何処に?!」


振り返るとヒロシは居ないし、小太郎は少し離れた木の上で興味無さ気に以前あげた野草図鑑見てるし(それ、持ち歩いてるの・・?)
吃驚して上げた声は思いの外大きくて、何事かとこちらを向いた鶴ちゃんと孫市姐さんとばっちり目が合ってしまった。


鶴姫「あら?初めましてのお顔ですね、安芸の方ですか??」

蒼「えっ!?え、えーっと、違うんだけど・・・・」

孫市「はっきり言わないのは感心せんな、何処の者だ」

蒼「うーんと、き、北の方の神社から・・・?」

鶴姫「あら!じゃあ、貴女も巫女なんですか?」


私とお揃いですね!、とニコっと笑う鶴姫からキラキラと結晶のような光のようなものが弾ける。
わー‥エフェクトそのまんま。

それに見蕩れていると、今度はずい、とたわわな乳房が目の前に現れる。
その威圧感にたじろぎ、更にその上から降ってくる訝しげな鋭い視線に縮み上がる。


孫市「お前は何故此処に?」

蒼「し、知り合いに連れられて・・・ところで!就様は?ここには居ないのかな?」

鶴姫「毛利さんとお知り合いなんですか?」

蒼「うん!」


たぶんね!!
孫市姐さんの威圧的な質問から逃れる為にわざとらしく話題を変えてみた。でも、そんなに不自然ではない筈・・・。
就様の名前を出すと鶴ちゃんが反応してみせた。
やっぱり瀬戸内仲間だからか反応速いなぁ。
それに、就様がきっと安芸のお宝所持してるんだろうし、そこにヒロシを居るだろうし!
就様の所に行けばヒロシ回収で、ついでに姉上知らないか訊いて、で、さっさと退散っと!!
それか、あわよくば保護してもらって、帰れるまで平穏に過ごしたいよ・・・。
これ以上戦に巻き込まれるのは嫌だよ〜・・・!


孫市「・・・・生憎だが、毛利は居ないぞ」

蒼「えぇ?!?!」

鶴姫「ザビー教?とかいうところに行ってるらしいです。私たちも毛利さんに会いに来たんですけど、御留守で・・」


だから、せめてと思って孫姉さまと潮干狩りをばばーんとしていたわけです!(キラッ
キラリン、とウィンクで星を飛ばす鶴ちゃんは可愛らしいけど、それどころじゃない。


蒼「寄りによって、サンデー状態かっ!!!!就様何してんの?!姉上に言い付けて株落としてやる!!」

鶴姫「かぶ??」

孫市「何の事か解らんが、今毛利を長宗我部と竹中が追っているらしい」

蒼「親ちゃんとはんべー様?変な組み合わせ・・・」

孫市「ほう‥二人とも知り合いか?」

蒼「え?えっと、そんな感じ」


はんべー様とは知り合いじゃないけど‥一方的に知ってるだけだけど。
それにしても変な組み合わせ。


孫市「といっても、別々に向かったらしいがな」

蒼「あ、ですよねー」

鶴姫「あと、女の人も一緒に行ったらしいです」

孫市「何でも竹中の連れらしいが、武人のようではなかったと言っていた」

蒼「?へー・・・」


誰だろう・・・?少なくともBASARA作品の中では豊臣に女の人は居なかったよね。
しかも、武人じゃない女の人を連れてるってなんだろう?お世話の人かな??
姉上だったらウケるーwww


鶴姫「そういえば、自己紹介がまだでしたね!私は鶴姫って言います!宜しくお願いします!!」

孫市「雑賀孫市だ」

蒼「えっと、導蛙神社ってとこで巫女をしてる蒼です!何かの縁でまた会うかもしれないから、覚えててもらえると嬉しいです!」


無いと思うけど、万が一、迷子になって来ても困らないように神社の名前も覚えておいてね!
無いと思うけど・・・ここ最近、こっちの人が迷って来る事が多いからね。


蒼「迷子になったらいつでも神社に来てね!!」

孫市「迷子だったらむしろ行けないと思うがな」

蒼「うちは・・「導蛙神社は迷子が行く所なんですよ、孫姉さま!」・・・そうそう、って、え?!鶴ちゃん知ってるの?!?!」

鶴姫「勿論です!バシッとお勉強しましたから!!」

孫市「そんなに高名な神社なのか」

蒼「知らなかったー・・・」

孫市「お前も知らないのか?!」


その後は三人で潮干狩りして、お茶飲んでってしてる間にヒロシが帰って来て(どっかから見覚え有る巨大なクルーラー系ドーナツ持って‥)
それについてきた小太郎を鶴ちゃんが追いかけまわして、ってしてる間にもうお別れの時間。
寂しくてちょっと俯いてたら、ととと、と鶴ちゃんが近付いてきて耳打ちを一つ。


鶴姫「神社の名前はあまり口外しちゃ駄目ですよ?」

蒼「え・・・?」

鶴姫「悪用、されちゃいますよ」


ちょっと悲しげに微笑んだ鶴ちゃんの顔が暫く脳裏から離れなさそうです。






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