生まれ変わった人のハナシ。

□『お仕事』のハナシー2
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お仕事』のハナシ-2



「さて、早速仕事に向かおうと森を歩いているわけだが」

「説明口調乙www」


早朝の、人どころか獣すら活動していないような靄の掛かる森の中を見るからに怪しい男女がつれだって歩いていた。(但し、傍から見る分には男同士に見えてしまっているのはリューコリリアの精神衛生上黙している事にする。)

二人は早朝、滞在していた街の出入り口で落ち合い、先程までこれから行う仕事の詳細を背の高い男―アルヴィンが、男に見える方―リューコリリアに伝えていたが、それも全て話し終わり、暫し静寂が訪れた。
そこで漸く二人は一つの問題に触れた。

二人が歩いているこの場から数m後方にある二人分の気配。

極力音を立てないように、とても慎重にアルヴィンとリューコリリアの後ろをついて来ているが、詰めが甘く、時折大きな物音を立ててしまっている。
その度に慌てて此方を窺う気配がし、それに対して何の反応も見せずにいると、小さくほっと息を吐いているのがなんとも可愛らしい。
不器用について来る二人組からは殺気も敵意も感じない。
恐らく偵察でも、敵襲でもなく、きっと・・・いや、間違いなくそうだろうと思い、アルヴィンとリューコリリアは図らずも同時に溜息を吐いた。

再び静寂が訪れる。
二人は一歩、二歩、三歩、と歩くと掛け声も無く「バッ」と勢いよく向かい合う。


「「ジャンケンッ!!!」」


ポンッ!、と見事にリンクして唱えると、それぞれ手を出す。
アルヴィンはグーを、リューコリリアはパーを。


「っしゃあ!自分の勝ちィ!!じゃ、後宜しくお願いしゃーっす」


にやにやと嫌な笑みを浮かべたリューコリリアに対し、アルヴィンは苦虫を噛んだような顔をする。
そんな嫌そうな顔を見て更に笑みを深めたリューコリリアは、巧くやり過ごしてネッ☆、と一言残して森の更に奥を目指して走り去った。

ガサガサという草を掻き分ける音が速く、遠くへ小さくなっていったのを確認してアルヴィンはまた小さく溜息を吐いた後、自分達を尾行していた二人に声を掛けた。


「おたくら、観念して出て来な」


一秒間、何の反応も見せなかったが、アルヴィンが後頭部の後ろで手を組み、身体をぶらぶらと左右に揺らして待っていると漸く二人組の男が姿を現した。
一人はアルヴィンが見慣れた黒髪に黒いロングコートの少年、もう一人は昨日リューコリリアと話しをしていた金髪に黄色いベストを着た青年だった。
予想通りの二人にアルヴィンはまた一つ溜息を吐いた。


「何、してんの。おたくら・・」

「「ごめん/スマン」」


しゅん、と肩を落として謝る二人は昨日初めて互いの顔を見たとは思えない程息がぴったりで少し笑いそうになったが、アルヴィンは顔を引き締めて言葉を続けた。


「で?何をしてたんだ?」

「・・・・・そ、その・・」

「気になって・・・つい、な」

「・・・はぁ。どっからついて来てたんだ?」

「「(それぞれ)宿から」」


少年―ジュードはアルヴィンを、青年―ガイはリューコリリアをそれぞれ尾行していた所、ばったり居合わせ、一緒について来たらしい。
・・・・ジュード君はまだしも、アラチノイドをつけて来たのはちょっと間違えると犯罪だぞ、とアルヴィンは思ったがそっと心に留める事にした。


「兎も角、これは遊びじゃなくてれっきとしたお仕事だから」


さ、帰った帰った、と二人に手を払うように降る。
が、ジュードとガイは互いを見て頷くと、アルヴィンの言葉を拒否した。


「悪いが、それには従えない。俺達も手伝わせてくれ」

「何の仕事なのか知らないし、アルヴィンの個人的なものかもしれなけど・・・・、僕たち仲間でしょ?」


「相談してほしいし、頼ってほしいよ」と漏らすジュードに不覚にも鼻の奥がツンと痛むが、こればっかりは頼るわけにもいかない。
気を引き締める為にも、もう一度小さく溜息を吐いた。


「駄目だ、こればっかりは。俺達には俺達なりのやり方がある。少しでもいつもと調子が変わればやられかねない」


暗に「それだけ危険なのだ」と伝えるも、ジュードもガイも引き下がらない。
行く、駄目だ、の押し問答を繰り返していると、森林の奥の方から地鳴りのような低い大きな轟音が響いた。


「チッ・・・・、また派手に・・」


アルヴィンは忌々しそうに呟くと、いつもより鋭い眼光でジュードを見た。


「悪いが、ジュード。恨まれようが嫌われようが連れてく訳にはいかねーんだ」


これは大人としての責任だし、俺の望みだ。
アルヴィンがはっきりとそう言うと、ジュードは静かに頷いた。
心配そうにアルヴィンを見上げるが、「無茶はしないで」と言い残して素直に街へと来た道を戻って行った。


「・・俺はついて行っても?」

「ガキじゃねーんだ。自分で判断しろ」


責任は取らねーからな、と言うとアルヴィンはリューコリリアの消えた方向、森の奥に向けて走り出した。
アルヴィンの焦りを感じ取ったガイは、募る不安を振り切るように彼の後を追った。




 
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