荒廃都市

□邂逅
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【やつら】が表れるようになってだいぶ時間がすぎたような気がする。だがあの時喰われた右目があったばしょはまだ痛みがひかない。

ミキ
「ユシキ、大丈夫か?」

僕よりも少し身長の低い、髪をオールバックにした幼なじみが声をかけてくる。

ユシキ
「なんとか」

さりげなく右側にいるのは僕の死角を守るためだろう。

ミキ
「もう、何日たったかなぁ……そろそろ拠点とか見つけないと」

ユシキ
「あぁ。今は他人も信用できない。とりあえずでも安心できる場所がほしい」

そう。襲ってくるのは【やつら】だけじゃない。人間も、襲ってくるんだ。

ミキ
「ん?……あれ…」

ユシキ
「どうした?」

ミキの視線を追っていくとセーラー服を着た女性が立っていた。おそらく僕たちと同じぐらいの歳だろう。

ミキ
「あんな所で一人で立ってて危ないな。ちょっと行ってくる」

ユシキ
「ミキ、」


ついさっき他人も信用できないと言ったばかりなのだが、まったく女には甘い。

ミキ
「おい、こんなとこにつっ立ってると危ないぜ?」

ミキが手を伸ばした時、悪寒の様なものを感じミキに叫ぶ。

ユシキ
「退けっ」

ミキ
「え?」

女はいつの間にか手にしていたナイフをミキの首に押し付けた。

「うごかないで」

そいつはミキより身長が高く、よく見れば女性らしい丸みがない。

ユシキ
「男か」

完全に油断した。ミキは隙を伺っているがうかつには動けない。

ミキ
「わりぃ、ユシキ」

「ユシキ?あなたユシキって言うの?」

よくわからないがぼくの事を知っているらしい。ならこっちに気をむけられるかもしれない。

ユシキ
「そうだ。お前は僕の事をしってるのか?」

「私がっていうよりアキ君が」

ほんのすこしナイフが離れた。ミキがすかさず腕をひねりあげる。

「いたたっ」

ミキ
「形勢逆転だな」

ミキが得意気にしても視線は僕を向いていた。

「ねぇ、ちょっとアキ君に会わない?」

ミキ
「お前ばかじゃねーの」

同感だ。敵かもしれない奴の仲間にわざわざ会えと言われて頷くやつはいない。

「大丈夫。危害は加えないよ。絶対に」

ミキ
「……なぁユシキ。オレこいつの今の言葉は信じていい気がする」


ミキの直感は信じる価値がある。

ユシキ
「わかった。ただし拘束したままだ」

「うん。それでいいよ」

そうして拘束したまま案内される方へと歩いた。しばらくすると住宅街のような場所にたどり着き、ある家の前で止まった。

「ここだよ」

家の中に入るがどこも荒れている。

ミキ
「で、アキ君はどこにいるんだよ」

「そこがね、隠し扉になってるの」

指差した場所はたしかに他とすこし色が違う。

ミキ
「開けるぞ」

ミキが開けるとそこには地下に向かう階段があった。

ユシキ
「なるほどな」

「このしたにいるよ」

階段は長くなくすぐに開けた場所に出た。一歩前にでようとすると発砲音がした。

「動くな」

ゴーグルにガスマスクをした男が銃を向けていた。今のは威嚇射撃だろう。

ミキ
「くそっ罠かよ」

珍しくミキの直感が外れたな。


「まってアキ君。私が連れてきたの」

アキ
「連れてきたって、そんな拘束されたままか?モエキ」


モエキ
「うん。ユシキ君なんだって」


アキ
「ユシキ……あぁ、なるほどな」


まるで値踏みでもするように見られる。あまり気分がいいとは言えない。
ユシキ
「僕になにかようか?」

アキ
「お前【やつら】の居場所がわかるんだろ?」

銃はおろしたが引き金に指がかかったままだ。きは抜けない。

ユシキ
「それで?」

アキ
「単刀直入に言う。オレたちと行動しないか?」
ユシキ
「理由は?」

アキ
「お前の【やつら】の居場所がわかる能力はオレたちが生き残るのに役に立つから」


本当にその能力があるかも、本人かもわからないのに交渉にはいるなんて。詰めが甘い。

ミキ
「本人かもわからないのにオレたちと交渉するのか?」

アキ
「お前らはオレが持ってる情報と一致するし、ニセモノだったら追い出せばいいだけの話だ」

そこまで話すとアキは銃をしまった。こちらもミキにモエキを放すように言う。

ユシキ
「僕たちも拠点となる場所が欲しかったところだ。断る理由もない」

ミキ
「おい、ユシキ」


ミキが不安に思うのもわかる。たがこのままでいるのも危険だ。

ユシキ
「すぐすぐ殺されたりはしないだろう。それに手段を得るためには多少のリスクはしかたない」


モエキ
「じゃあ私たち仲間だね。私はモエキだよ、油断させるために女装したかてるけど男だよ」

ぱっと笑うモエキにはまったく警戒心がない。単純と言う言葉がよく似合う。

アキ
「今更な気もするが。オレはアキ。銃火器は一通り扱えるが前で戦うよりは工作の方が得意だ」


ミキ
「ミキだ。戦いなら人間にも【やつら】にも負けねー」

この二人が組めばかなり幅がひろがるかもしれないな。

ユシキ
「ユシキだ。アキがいった通り、ある程度の範囲なら【やつら】の居場所がわかる」


モエキ
「これからよろしくねー」

アキ
「よろしく」

ミキ
「こっちこそ」


これからどうなるか分からないが、

ユシキ
「よろしく」

この仲間でいられたらいいと思った。

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