幼なじみ

□一水の行方 上
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「ちょっと、人に見られるってば」

「平気だ。ここは死角になってるし、陽の顔は俺の腕で隠してる」

横を向けば、怜の壁に突いている腕が見える。

そりゃ、俺の顔は見えにくいかもしれないけど…。

この体勢は、そういう問題じゃないと思う。

「なぁ、俺が昨日言ったことは覚えてるか?」

「…昨日?」

そんなことより、異様なまでに近いこの距離が嫌だ。

角度によったら、キスしてるように見えるかもしれない。

…キス?


確か、俺…。

昨日、怜にキスされた…?


忘れていた訳じゃない。

でも、なんだか実感が湧いて来た。

目の前には、怜の唇がある。

なんだか急に恥ずかしくなって顔を伏せた。

本当に、この体勢は不味いと思う。

「俺、言ったよな?本気で陽のこと好きだって」

「…言った」

「考えたか?ちゃんと」

「一応」

でも、分からなかった。

そう言ったら、怜は怒るかな?

怜の視線が、怖い。

冷たいとかじゃなくて、怖い。

なんでだろう…。

「陽?」

「…分かんなかったんだよ」

「何がだ」

「本気の好きっていうの…」


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