秘める恋
□重なる想い
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僚は、唯人を強く抱き締めて、髪を撫でる。
「いっそ、連れて行けたら良いのにな」
無理だと判っているんだ、お互いに。
だからこそ、口に出して希望の言葉を紡ぐ。
少しでも、現実が望んでいる未来に近付くように。
「俺も、兄さんについて行きたいよ……」
出来ることなら、ずっと一緒にいたい。
でも、追いかけることなら許されるかもしるない。従弟して、尊敬する兄を追いかける事なら、出来るかもしれない。
「ねぇ、兄さん」
唯人は暗い顔をしている僚に声をかける。
「俺、兄さんのこと大切だよ。だから、追いかけるから」
「……唯人」
幸い、今周りの人達は唯人と僚のお互いが好きでいる事に賛成だ。でも、それがいつまで続くか分からない。
「今離れても、また会えるよ?これが最後じゃないよ。だから、安心して行ってきて?」
背中を押さなければ。
待ってもらいたいから。いつか会えるのだと信じて欲しいから。
自分達の関係は終わらないのだと、思って欲しいから。
「安心してもらわないと、俺が兄さんを、追いかける事なんて出来ないよ」
わざと茶化すように唯人は言う。
「……最後まで、俺は唯人に励まされて助けて貰うんだな」
「俺は別に……」
何もしていない。
むしろ、唯人が僚から今までたくさん励まされてきた。
「俺も、唯人に追いかけて欲しい。ここで終わりにしたくない。唯人を信じたい」
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