秘める恋

□重なる想い
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「俺も、唯人に追いかけて欲しい。ここで終わりにしたくない。唯人を信じたい」

「……うん」

「どこまで行っても、来てくれるか?」

「うん。勉強も頑張って、必ず兄さんの所に行くよ」


きっと、僚は留学先で就職してしまう。それが確定しているから、先生も留学を薦めたのだろう。

「……ごめんな」

「兄さんが、なんで謝るの」

「……」

「好きだよ、兄さん。今まで隠してたから、こんな風に気持ちを言えることすら俺にとっては嬉しい」


秘め続けるのは辛い。

バレないように生活して、接して……。自分の気持ちに素直でいられないのは、苦しい。

それに比べたら、気持ちが通じていて、その気持ちの為に頑張れることは幸せだ。


「……待ってる。唯人が来ること」

少なくとも、二年間は絶対に会えない。

僚が休みに帰ってくることも期待出来ない。


寂しい。

気持ちが通じてすぐに離れるなんて、悲しい。




「僚ー!!そろそろ時間よ」



でも、別れは無情にもやってくる。

「……時間、だって」

「知ってる。分かってる」

そう言いながらも、僚は唯人を離さない。



「また、ね。兄さん」

「……」

「好きだよ、兄さん」

「……俺も、大好きだ」


もう、満足だよ?

だから、もう良いよ?



「――…いってらっしゃい」


自分から離れて、僚を部屋の外に出す。

そうしないと、いつまでも離れられない気がしたから。



「大好き、兄さん。本当に、好きだよ」



幼い頃から、貴方だけ。


ずっと、憧れの存在の貴方が好きでした。


それなのに、お互いの人生を捨てる程の選択が出来なくて、ごめんなさい。

待たせるなんて辛いこと、させてごめん。

また会えると信じてる。

でも、それでも寂しい。





「―――…愛してる」





だから、待ってて?

きっと、必ず逢いに行くから……。




-Fin-
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