遠回りの恋

□結婚式の前夜
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無事二人は大学生になった。

相変わらず二人は“親友”のままだった。

晃輝は誰とも付き合わなかったし、秀也はフリーの時がないほど遊ぶようになった。

誰一人、秀也が本気で好きになった相手なんていなかった。

それが晃輝にとって唯一の救いだった。


でも、過去に一度だけ、大学生の時にあった覚えがある。





その日は、晃輝がアルバイトがあった日で、秀也は先に家に帰っていた。

バイトの休憩に入ってすぐにメールがあった。


秀也からだった。


たった一文だけ送られていた。


『ヤバイ、俺泣きそう』


シンプル過ぎて、何かあったのかがよく分かるものだった。

咄嗟に、秀也に電話をかけていた。呼び出し音の後に秀也の声がした。

だからすぐに、理由も聞かずに言った。

「秀也、大丈夫か?」

それから少しして、秀也が泣き始めた。


その時に理由が分かった。


意外と好きだった奴にフラれたこと。

晃輝が電話をかけてくるとは思ってなかったこと。

泣き止んだ後にメールを送ったから、電話で泣いてしまったこと。


今回の子のことを、秀也は今までで一番好きだったんだ。

だから、フラれてショックで泣いている。

その女子にすごい嫉妬した。


秀也にそれだけ想われている。



しかもそれを、素直に受け止める事が出来る。


俺は、出来ない。


伝えることなんて叶わない。


でも、“親友”だから、傍にいれる。

でも、“親友”だからこそ、伝えることが出来ない。

でも、今はまだ“親友”だから、助けないといけない。

慰めてやらないといけない。

晃輝は複雑な気持ちで、秀也が泣き止むまで黙っていた。





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