オオカミの例外
□悪い癖
1ページ/6ページ
稔の最初の印象は大したものじゃなかった。
地味だなって。でも、よく見たら目が大きくて一般的に言う可愛い部類に入るんじゃねぇのって思っただけ。
たまに一人でいるのを見かけたけど、気にも止めなかった。
元々、俺も一人でいるようなタイプだったから、稔もそうなのかと思った。
でも、それだけだった稔に対しての認識がある日変わった。
高校に入っても、秀は一人でいた。クラスのいくつかのグループに交わることもなかった。
だから、稔がクラスの上の方にいるようなグループにからかわれていても、気にしなかった。ただの遊びだと思っていた。それに加わるわけでもなく、止めるわけでもなく、秀は中立の立場にいた。
それが段々エスカレートして、稔がクラスの奴から無視されるようになるまで。
誰も、止められなかった。
強いグループの奴が仕掛けていたから。
そこで、俺の悪い癖が出た。
最も、それを自覚したのは稔と話すようになった後だから、当時は無意識だったけど。
独りでいる奴がいる。
そんな奴を見ると助けたくなる。
それだけなら、善人だ。
でも、それに俺は色々プラスされる。
――…優越感だ。
助けて、仲良くなって、でも、ずっと一緒にいるのは嫌で…。
冷静に考えたら、すごく自分勝手で最悪だと思う。
でも、止められない。
無意識に、その優越感を追う欲求を止められない。
そして、例外なく、それは稔の時にも現れた。
.