オオカミの例外
□分からぬ心
1ページ/4ページ
最近、自分のことがよく分からない。
自分の思考が、分からない。
秀は、稔を送って帰宅して一人、ベッドに仰向けになって考えていた。
稔の笑顔を曇らせるようなことはしたくない。
落ち込んでいる、悲しい顔は見たくないし、その原因にもなりたくない。
常に、笑っていて欲しい。
それは多分、ただ単に友人としては正しい考えだろう。
じゃあ、稔が女子逹に触られてるのを見てムカついたのは?
触ってる女子にも、簡単に触らせてる稔に対しても、苛々したのは?
これは、なんだ?
自分で自分が分からない。
やっと、自分から切ろうと思わない【友人】が出来たから?
枕に顔を埋めて、息を吐いた。
本当にたまに、稔を一瞬でも可愛いと思うのは、【友人】としての感情なのか?
秀は、胸の奥に分からない疑問を抱えたまま、眠りに落ちた。
*****
「宮野(みやの)ー」
「ぁ?」
学校に来て早々、クラスの奴が大きな声で自分の名字を呼んだ。
「お前を紹介して欲しいって女子が結構いるんだけど」
数回話した程度の男子。
誰だよ。
なんで、その女子は直接言って来ないのか分からない。
直接来たら、すっぱり断れるのに。
「全員知らねぇ。メアド送るなよ」
「えぇー。せめて一人だけでも!」
「しつこい」
「取り敢えず一回でも連絡取ってくれよ。じゃないと俺がっ」
「お前の体裁なんて、俺には関係ねぇ」
親しくもない奴にそんな事言われても、同情なんて湧いても来ない。
「一応、送ったから、頼んだ」
「おい!」
勝手に言い逃げして去って行きやがった。
どうでも良い奴の写真なんていらないのに。
早速捨てようと携帯を取り出した。
.