オオカミの例外

□伝える心、想い
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大野の件があり、自覚した。

俺みたいな奴は、稔の傍にいたら傷付かせるんだ。

「宮野ー」

朝から駆けよってきたのは、華奢な見た目の稔ではなく、大野だった。

まだ、馴れない。

もうこの朝の光景を見るのは、何度目かなのに。

いつだろう。

この生活に嫌気がさすのは。

大野のくっつきが、我慢の限界に達するのは。

「おはよう、大野」

稔が、秀の前に立った。

「秀、あのね」

「おはよう、稔」

それだけ言って、秀は稔を自分の視界から消す。

稔が、無視をするわけじゃない。

ただ俺が、そっけなく接しているだけ。

その度に、稔は眉をひそめて、苦しそうな顔をする。

それを見るのが、辛い。

稔が、なんとか俺と話そうと努力している。

その努力を受け入れたくて、でも、受け入れたくなくて…。

結局、秀は稔を避け続ける羽目になっていた。

傷付いた顔を見たくなくて避けているのに、稔は傷付いた顔をする。

俺は、どうすれば稔を傷付けなくて済む?


最近、そればかり考えている。稔の事ばかり、ずっと。

好きだから?

触れたいと思うほど、好きだから?

ただ、一緒にいて楽なんだ。

話す事も、黙っている事も、稔だから、心地良い。

背中に、稔を感じた。

立っているのだろう。


そうしてお前は、何を思っている?


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