好きな人〜もう一つのラスト〜

□〜再会〜
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やっぱり、今まで育ててくれた姉さんを断ることなんて俺には無理だった。
だから、吉瀬さんを諦める。
そう決めた。
なのに…。

それを伝えることの出来ないまま、数日が経っていた。
言わないと。
でも言ったら、本当に別れることになってしまう。
この気持ちの繰り返しで、吉瀬さんを呼び出せずにいた。
「どうしよ…。離れたくない。でも、姉さんには幸せになって欲しい」
相反する二つが混じり合う。
でも、もうタイムリミットだ。
紗季が怪しんでる。
いつまでも吉瀬が行動に移さないから。
不意に、傍らに置いていた携帯が鳴った。
パッと飛び起きて、携帯を手に取った。
「電話。…吉瀬さんからだ」
鳴り響く、着信音。
出ないといけないと、焦る。
「……もしもし」
『久しぶりだね、瑠』
「吉瀬さん」
やっぱり、好きだ。
声を聞いて、実感する。
『きっと君のことだから、決めたのに連絡が出来ないんだろうなって思ったんだ』
当たっている予測に、思わず笑う。
「さすが吉瀬さんだ。俺のことをよく分かってるんですね」
『大切で大好きな恋人のことだから』

好き。

大好きです。

吉瀬さん。

でも……。

「じゃあ、俺の決断も分かってるんじゃないですか?」
『さぁ?』
「意地悪だなぁ、吉瀬さんは」
『そこも、良いんでしょ?』
…本当に、よく分かってる。
そうですよ。
俺は、あなたのそんな所にも惹かれたんだ。
無意識に、また笑っていたようだった。
吉瀬が瑠を呼ぶ声がする。
「…電話してきたってことは、もう限界なんですね」
吉瀬からの返事はない。
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