蓮華学園高等部

□新入生
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『新入生代表、挨拶』


「はい」


広い体育館。人を呼んでコンサートでも開けそうな、豪華な装飾が施されている。


なんでここにいるのだろう。

場違いな気がしてならない。




事の始まりは一ヶ月前。




「え!?高校?」


その時、伏見志乃(フシミ シノ)は庭で一人、筋トレをしていた。

「そう、志乃は高校に行けるのよ」


いやいや、だからなんで?


金髪に蒼い瞳をしたクウォーターの母の発言に志乃は驚きを隠せない。

今は学生でいう春休みの時期だ。

志乃は中学生の時に多少やんちゃをし過ぎた為、高校に行く事を諦めており、高校受験をしていなかった。

というか……多少というより、かなりやんちゃしてしまった。

ある地域一帯(関東より少し規模小さめ)を統一してた。

だから、高校なんて行けるはずがない。

顔を見てダメか、名前を聞いただけで拒否されるはずだ。

なのに、なんで?


「俺、受験してないよ?」


志乃は外での筋トレを中断して、未だ二十代に見えてもおかしくない、母の元へ歩み寄る。

「試験は受けてもらったわよ?」

「ゴメン、記憶にない」

記憶を辿ってみるが、思い当たらなかった。

「前にパソコンで」

母は部屋に置いてあるパソコンを指差す。

志乃は、そうして理解した。

「時間制限付きで、色んな教科の問題を解かされた?」

「それよ、それ」


紙と鉛筆がパソコンになっただけで、普通の試験と同じだった。


しかし…。


「普通、面接とかあるんじゃないの?」

一般的に面接は行われるものだ。まして、パソコンで受けるようなものなら尚更。

「なんか…。志乃の成績と顔写真を見たら、即合格にしたらしいわよ?」

写真だけで?

しかも、不合格じゃなくて合格にした?

そんなに、黒髪に蒼い瞳が珍しかったのか?


志乃には、純日本人の父とイギリスのクウォーターの母がいる。

髪質は父を受け継ぎ、滑らかな黒髪。顔は母を受け継いでいるため、蒼い瞳で綺麗な顔をしている。

「きっと、志乃が美人だから合格にしたのよ」

「いや、学校は顔で判断しないから。それに、俺は美人じゃない」

「また志乃はそんな事…。ちゃんと認めなさい」

そんな風に怒られても…。

実際、自分でそう思わないのだから仕方がない。

「とにかく、志乃は来月から高校生よ。分かった?」


なんと強引な。



そうして、志乃は蓮華学園高等部に入学する事になった。
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