蓮華学園高等部

□束の間
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怖い、嫌だ。

こんなにも暗いのに、どうしてあなたの顔だけはよく見えるの。

怖いよ、助けて。

誰か……!!



視線が、身体の中を襲ってくる波が、怖い。

こんなに恐ろしいモノなら、いらない。

全部、捨てたい。これからの可能性なんて、いらない。


だから……。


もう、ヤメテ!!!




「!!」


手を伸ばした先には、明るい光。手は空を掴み、そのままベッドの上に投げ出される。

天井の電気が点いていた。

志乃は、その眩しさに目を細める。


そうだ、ここは部屋だ。

夢の中じゃない……。


「……夢?」


夢って、なんだ?

どんな夢を俺は見ていた?

……分からない。


だるい体を起こして、志乃はベッドから出る。

頭が重たい。何か鉛でも入っているのではと思うくらいに、重くて痛い。

「……今、何時だ」

志乃は寝室から出て共同スペースへ向かう。

「おはよう、志乃。よく寝れたか?」

ソファに時守が座っていたが、志乃と目が合うとこちらに来た。

「……ん、たぶん」

気分が悪い。きっと悪い夢でも見ていたのだろう。志乃は頭に手を添えながら、答える。

「風呂、入って来たら?汗をかいてて気持ち悪いだろ」

時守に言われて初めて、志乃は自分を見下ろした。

昨日来ていた体操服のままだった。




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