秘める恋
□偽る想い
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気持ちを隠すだけでは駄目。態度も今まで以上に気をつけないと。
唯人が亜弥と話したあの日にそう決めて、数日が経った。
結果的に、周りに違和感を感じさせた。
「今度は何があったわけ?」
達也が唐突に尋ねた。
「…何が?」
なんのことか分からない唯人は、そのまま質問した。
「変だ」
「変?」
「お前の、僚さんに対する態度。不自然過ぎる」
従兄弟らしくなろうと頑張ったのだ。
触れられてもさりげなく逃げて、自分に言い聞かせるように“兄さん”と呼ぶ回数を増やした。自分から触れるのも止めるようにした。
「だって…従兄弟らしくなかったからさ…」
「あぁ、そういうこと」
唯人のその言葉だけで分かったらしい。達也は溜め息をついた。
「お前の場合、それは逆効果だろ」
「なんで?」
「唯人と僚さんは“仲良すぎる従兄弟”だったから」
「どういう意味だよ」
「急によそよそしくなってるんだよ。本来が余りにも仲良いから、逆に浮いてるんだよ」
達也に指摘されて、ようやく気付いた。そう言えば最近、親から何かあったのかと聞かれることが多かった。
「急になんでそう思ったんだか」
「それは…」
亜弥と話した時に、思ったから…。
周りから従兄弟らしく見られるようにしようって。
気持ちを隠すと決めた。それなら、やり通さないとって。