秘める恋
□交錯する想い
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亜弥と別れて、唯人は自分でも理解出来ない想いを抱えながら歩いていた。
美佐も亜弥も、分からない。
何がしたいのか、なんで唯人なのか、分からない。
誰にぶつけて良いのかも……分からない。
「―――唯人」
ふいに呼ばれ、顔を上げた。
「……達、也?」
なんで達也が、いるのだろう。
先に帰っていてと伝えたのに。
達也は、喫茶店から大して離れていない場所に立っていた。
「…よう」
達也はゆっくりと唯人の元に寄る。
「なんで、いるの?」
「心配だったんだよ。昨日あんなことあった後だし、更に亜弥さんと会って話すなんて唯人がキツいかと思ってさ。話くらいなら聞いてやれるかと思ったんだ」
苦笑いで、達也は言う。
その達也を見て、唯人は思う。
どうして、こんな風に達也は欲しい時にいてくれるんだろう。
どうして、欲しい言葉をくれるんだろう。
「ぅわ」
唯人は反射的に達也に抱き付いていた。
「唯人?どした?」
「……達也」
「ん?」
「達也、前に言ったよね。俺が望む存在になるって。――――なら、一緒にいたい。兄さんよりも誰よりも、傍にいたい」
一緒にいて安心する。
一緒にいて楽しい。
傍にいたい。
「俺、達也の言葉に甘えても良い?」
呆然としていた達也だが、そっと唯人の背中を抱き締めた。
「…お前、本気か?」
「うん」
「撤回なしだぞ?」
唯人は回した腕に力を込めた。
「…好きだよ、達也。まだ完璧に兄さんを忘れたわけじゃないけど、でも」
「構わない。僚さんの事簡単に忘れられる訳ないの知ってるから。そう思ってくれる事自体、すげぇ嬉しいから」
達也は唯人の言葉を遮り、肩口に顔を乗せた。
「じゃあ、甘えても良い?頼っても良い?―――…恋人みたいに、一緒にいても良い?」
「当たり前だろ。拒否する訳ないだろ」
「……達也」
本当に嬉しそうに言うから、こっちまで照れてしまう。
「お前が望むなら、俺は恋人のように傍にいてやるよ」
幸せだな、と思った。
こんな人に好かれて、幸せだと思った。
そして、利用するみたいになって申し訳ない、と思った。