好きな人
□〜出会い〜
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鬱陶しいほどの雨がまとわりつく。
自然な茶色の髪が、雨に濡れる。ワックスををつけたりしないから、こういう時には良かったと思う。
何もしなくてもふわっと広がる髪質は、母親譲り。茶色の髪は、父親譲り。男らしくない細い顔立ちは、いつまでも幼い顔をした母親譲り。
でも華奢に見えないのは、運動をしていた父親の体格をもらったから。
瑠(りゅう)は、雨の降る中、じっと傘も差さずに立っていた。
近くでは、葬式をしていた。
その光景を、じっと瑠は見ていた。
泣いている人。泣き崩れている人。淡々と仕事をしている人。
それが珍しいわけではない。一度、経験しているから。
ただ、それを通して思い出しているだけ。
昔の、過去の記憶を。
「瑠!」
声に振り替える。
「…姉さん」
「もう、なんで雨に打たれてるのよ」
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